プロジェクトの全体像をメンバー全員で共有せよ
前田:本に、「商品が売れた理由は、営業マンの手柄なのか、開発者の手柄なのか、宣伝の手柄なのか、あるいはたまたま口コミで売れたのか。そうやって分けて考えるのは意味がない。全体として捉えた方がよい」という仲山さんのお考えが書いてあって、プロジェクトもまさに同じだなと思いました。
プロジェクトが健全に進むには、どういうゴールを目指すのか、そのためにどういう施策を打たなければいけないというように全体の辻褄が合わなければいけません。しかし、全体性や関係性を気にかけることができる人は少ない。なぜなら、プロジェクトは分業なので部分最適になるからです。どうすればメンバーにそういう視点を持たせられるようになりますか?
仲山:自分がリーダーだと自覚している人は、全体像や関係性がわかっているのは自分だけだと思っていることが多い気がします。「それならみんなにも教えようよ」と、僕は思います。服を畳んだ後、収納別に分けておいた方が喜ばれるのか、逆に怒られるのかは、全体像しだいで変わります。だから全体像を教えてもらえないと何もできない。
前田:昔は「1聞いたら10わかれ」と言われることがありましたけど、ちゃんと丁寧にメンバーに全体像を教えることが最低限必要だということですね。
仲山:全体像が見えていない人に想像して考えろと言えば、間違った想像をするのはあたりまえですからね。「教えた方が早くないですか?」ということです。
前田:プロジェクトの世界では、全体像を適切に伝える術が無かったんです。ですから『予定通り進まないプロジェクトの進め方』の中で「プロジェクト譜」を作り可視化して伝えることを推奨しています。
仲山さんがおっしゃるように、全体像がわかっていないと畳んだ洗濯物を仕分けするのは怒られるのか褒められるのかわからない状態になる。だからそこをすり合わせて共有しておく必要がある。結局全体像が見えるということは、チームのメンバーの意図が見えるということですよね。全体像が見えて、かつ各メンバーの意図が見えた時に、気持よくプロジェクトベースの仕事ができるのかなという気がしています。
仲山:そう思います。
前田:本の中で、辻褄を合わせて収支をちゃんとつけさえすれば、自分がやりたいことをいろいろやってみたらいいと書いてあったのも印象的でした。
仲山:前例がないチャレンジなんかは、元さえ取れれば失敗とは言えないし、むしろやってよかったということになります。ただ、その元をいつ取るのかというスパンが、みんな短すぎる。そもそも元って、お金だけじゃありません。精神的報酬とか強みとか仲間とか自由とか、いろいろあります。一つ仕事をやり遂げて、何年後かにあの時楽しかったからまた一緒にやろうという話がきて、そこで元が取れるかもしれない。僕は長い目で見たときに損をするのは嫌いです。今はマイナスでも、長い目で見た時にプラスに転じるとわかっていることはやり続けることができます。
前田:私もまったく同じです。今私がやっている勉強会は全部無料なんです。だからたびたび「そのモチベーションはどこからくるの?」と聞かれるんですけど、ちゃんと辻褄を合わせていて結果的に収益は回収できるようになっている。ただ、それを短いスパンで回収しようとは思っていないだけなんですよね。
仲山:それも含めて全体像は、言ってしまえば自分で決めればいいわけです。自分の中でここからここまでの全体が見えていれば、それが全体像。
前田:なるほど!これまでプロジェクトは広告やプロモーションや開発など、限られた世界の働き方でした。しかし仲山さんの自由な働き方の本が出て、そういう考え方が一般にもいきわたっていけば働き方は大きく変わるでしょう。そういう時代の流れが来ていることを感じました。
書籍案内
『予定通り進まないプロジェクトの進め方』
ルーティンではない、すなわち「予定通り進まない」すべての仕事は、プロジェクトであると言うことができます。本書では、それを「管理」するのではなく「編集」するスキルを身につけることによって、成功に導く方法を解き明かします。
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