編集を頑張っているユーチューバーが伸びる
権八:当時、ユーチューバーという言葉はありましたか?
ヒカキン:ないですね。ユーチューバーという名前は2014年ぐらいからふわーっと出てきた感じです。
権八:ヒカキンさんは当時既に10万単位のフォロワーいたと思うんですけど、今は何人ぐらいいるんですか?
ヒカキン:チャンネルが複数あるんですけど、メインのHikakinTVは650万人ぐらいですね。
中村:政令指定都市かというね。
権八:すごいな(笑)。そういう文化はアメリカのほうが先行してるじゃないですか。それを見ながら、よりもっと大きく、有名になりたいなど、今はどういうモチベーションで日々やっているんですか?
ヒカキン:僕は海外のユーチューバーを結構見るんですけど、英語圏、スペイン語圏は言語の市場の大きさが違うので規模が違いますね。でも、登録者数で争おうとは思わなくて。ユーチューバーになろうと思ったときに、まず考え方として、グローバルを目指すか、日本でいいのか、と分かれると思うんですけど、僕は振り切れていて、日本でいいでしょと思うタイプでした。海外のギャグセンスはわからないし、片言の英語でアメリカンジョークを言えないし。
一同:(笑)
ヒカキン:気持ちよく、それ無理じゃない、分が悪すぎるとすぐに思えたので。全部日本語で、日本で有名になって、海外に住むこともないだろうしと、日本に絞っていこうというのが僕の中でうまくいきました。
中村:今は日常系でもいろいろなジャンルの人がいて、その中でも親からしたら、ヒカキンだったら危なくないからいいかという、そこもよさなんですよね。
権八:はいはい、下品じゃないしね。
中村:まぁまぁ危ないこともするんだけど、大人もこれだったらノリとわかっているからいいかと。架空請求にこっちから電話かける系のやばいことではないじゃないですか。
ヒカキン:確かにみんなもがいているのかな、というのはわかるんです。ちょっと変わったこと、尖ったことをしないとフックにならない、売れるきっかけがつくれないからやっちゃうのかなと思うんですけど、やっぱり後になって動画を消されたり、訴えられたりするので。それでロケットスタートをしても、後になって結局それが自分に回ってくるとわかっているので、じわじわ上がっていく人が最後に強いと思いますね。
中村:毎日のようにアップしないといけないから、今は動画のアイデアはどんなときに考えるんですか? これだったらつくってもいいかなという、ヒカキンさんなりのフィルターがあるんですか?
ヒカキン:思いつくのは余裕があるときですね。切羽詰まっていると、編集がやばいというのが先に立ってしまって、考える余裕もないんです。最近実は毎日投稿ではなくなってきていて、でも、それをしてから1本1本のクオリティも上げられています。毎日投稿を今でも頑張っているトップクリエイターはいるんですけど、時代の流れが変わってきているなという感じはあって。今後はだんだん毎日投稿しなくなっていくんじゃないでしょうか。
中村:今までは毎日新しいものが出てくるから、テレビの向こうのスターでありながら、毎日近くにいる友達のような感覚がチャンネル登録者数を増やす秘訣だったけど、クオリティ、コンテンツのほうに戻ってきてるんですかね?
ヒカキン:戻ってきてるかもしれないですね。僕がユーチューバーになったのは2012年ですけど、当時は、BGMなし、効果音なし、テロップなしでした。撮って出しのような感じで、30分かからないぐらいで編集が終わって、むしろ毎日暇だったんですけど(笑)、今は10分以上の尺で、全部テロップが入って。編集画面を見るとDTM(デスクトップミュージック)をやってる人みたいになってるんですよ。
一同:(笑)
ヒカキン:PCで音楽をつくってるのかな?みたいな。だから、みんなアシスタントがいたり、グループユーチューバーでテロップを入れたりしないと無理になってきています。そういう背景もあって、クオリティが求められて、テレビクオリティに寄ってきているかもしれないですね。テレビの編集をしている人に、普通に外注しちゃう人もいるので。
中村:効率的ですよね。
ヒカキン:ただ、その人の編集も含めてユーチューバーだったりするので。一概には言えないですけど、僕の中では編集を頑張っている人が伸びている感はありますね。
権八:そうなんだ。