デジタルコミュニケーションの今後は?
嶋:デジタルデバイスを通じての生活者と企業の結びつき方は、テレビ的なものからラジオ的なものへ移行してきたと思うんです。デジタルデバイスが出始めた1990年代、企業はホームページをつくりましたよね。今でいうところのオウンドメディアです。
2000年代になると、ホームページをつくるだけでなく、人のタイムラインに自社の情報をいかに割って入れていくかを駆使し始めました。2010年代はスマホが発達したので、アプリというフォーマットでつながる仕組みをつくりました。そして今後どうなるかと言うと、メッセンジャーのように企業と人が一対一で対話する時代が来るのではないでしょうか。
例えば、クロネコヤマトに「俺の荷物いつ来るの?」とLINEで聞くことができるとか。ワントゥワンマーケティングを実行しようとするとコストがかかると思うのですが、AIを使って対応するとか、航空会社や銀行でダイヤモンド会員とか預金がいくら以上とかでパーソナルな対応をしていくようになるんだと思います。
ホームページは会社のものですが、タイムラインとアプリは人のものなので、そこに割っていかねばなりません。チャットは超プライベート空間なので、「皆さん」から「あなた」へ問いかけるコミュニケーションが必要になります。
田端:ホームページの時代→タイムラインの時代→アプリの時代→チャットの時代になっているということですね。
嶋:そうですね。そのようにコミュニケーションのチャネルはどんどん増えましたが、それらを統合して一人のクリエイティブディレクターがアウトプットをしてコミュニケーションデザインする「統合マーケティング」の時代になっていると思います。まさにケトルが目指してきた道です。
田端さんはまさにZOZOのコミュニケーションデザイン室 室長ですよね。そして、これからの時代、この統合はさらに深化していくと思うのです。これからは生活者がずっとつながり続けるわけで、クリエイティブディレクターにもデータの知識やアナリストをディレクションするスキルが必要になってくる。
田端:今までのストラテジックプランニングって数カ月単位でしたよね。メールは1日単位でのやりとりでしたが、これがLINEのようなチャットになると分単位でのコミュニケーションで、当意即妙のレスポンスが求められる。もう、鉄道がダイヤ通りに走るように、着々と計画が進行していくようなマーケティングコミュニケーションは古い、つまらないと感じますね。
嶋:上下双方向のコミュニケーションになっていくので、いわゆる「リアクション芸」が重要になってきますよね。今までの出稿チェックがゆるい流れになって、予算を最初に決めないで、リアクションの伸びしろがあるというマーケティングになっていくのではないかと思います。
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