これから広告・メディアはどうすればいいのか — ZOZO 田端氏×博報堂ケトル 嶋氏 対談

今後の広告コミュニケーションに必要とされる3つのポイント

嶋:田端信太郎がZOZOのコミュニケーションデザイン室 室長になって感じた変化は?

田端:3つあります。1つめは「法人でなく個人」です。小島慶子さんがラジオパーソナリティとして話すとき、TBSなどの放送局としての看板をかぶっていたら面白くないじゃないですか。「誰が」言うかが大事ですね。ブランドのロゴとかあっても、生身の人間でないと弱いんです。

受け手にとって、話す主体の顔と名前がすぐ一致して思い浮かぶことって大事だと思います。皆さん、社長が変わったことや雑誌の編集長が変わったことに気付ける企業や雑誌ってありますか? ほとんど、ないと思いますよね。好きか嫌いかはどっちでもいいんです。気付いてもらうこと、人の顔が浮かぶコミュニケーションが、企業と消費者との関係性でも、より大事になってきていると思います。

嶋:PRだけの問題だけでなく、ブランディングに直結しますよね。イーロン・マスクとか、企業広告で知ったわけじゃなくて、記者会見とかで知りました。日本もそういうふうに変わりつつありますね。

田端:たとえば社名変更や合併にあたっての、企業広告って「誰が言ってるんだろう?」って思うことがよくあります。会社って誰のもの? 株主、社長、社員? やはり「顔が見える生身の個人」が必要だと思いますね。良いことも悪いこともその人が全部やってるんだっていうことが明確になって初めて、次のステージに行けると思います。

嶋:企業トップだけでなく、商品開発やサービスの人も、ということですね。

田端:ZOZOTOWNで言うとTwitterのアクティブサポートですね。企業のカスタマーサポートのアカウントで、最後に個人名を出して発言しています。

嶋:2つめは?

田端:「建前より本音」です。せっかく生身の人間が話しているのだから、本当にその人が心から思っているのだと伝わったほうが、遥かにレバレッジがかかります。心にも思っていない、会社の公式見解や広報が書いた原稿を社長が言わされているのではなく、心の底からこの人が言っているというのがわかるようにしていくのが大事でしょうね。

嶋:3つめは?

田端:「HOWでなくWHYが大事」です。最新デジタルマーケティングの方法論などの各論の話でなく、「誰が」「何を」「なぜ」言おうとしているのかがよっぽど大事です。デジタルメディアは所詮、手段に過ぎません。ZOZOの場合、前澤社長は背が低いというコンプレックスがあり、ファッションが好きだけど自分の体形に合う服がないという悩みから、プライベートブランド「ZOZO」の構想が生まれました。

このブランドの出発点が、芸人としての「掴み」のトークみたいなものです。生身の人間として共感を醸成することが、社長に限らず、これからの企業広報において決定的に大事なことだと思います。

嶋:今のお話、「前澤友作」という特殊な例だと思ってしまった人がいるかもしれませんが、マーケティングでは、なんでその会社がやっているのかということが重要ですよね。ディスラプションの時代、すべてのものがつながっていくと、住宅をつくっていた会社がサービスを提供するようになって、携帯電話会社や鉄道会社が生活の会社になって……といったように変化していきます。

そういうことが起きると、「パーパス」である「なぜこの会社がそれを提案するのか」が重要になります。IoT化が進み、誰もが新しい生活を発明できる時代になる中で、生活者と企業との関係性にこういう感覚が生かせると良いと思います。

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