「販促とブランドづくり」 — イトーヨーカドー富永氏、元レクサス高田氏対談

企画を評価する3つの視点

高田:先ほど、メーカーと広告代理店の企画提案の話が出ましたが、富永さんは企画の評価をどのようにされていますか。

富永:優れた企画を評価する指標は3つあります。アイデアがあるか、企画になっているか、ビジネスのパフォーマンスに効くか、です。

高田:アイデアがあるか、というのは。

富永:「これは面白い!」と、消費者に思ってもらえるか、どうかです。私が最終審査員を務めている「販促会議企画コンペティション」の第1回グランプリを獲得した、「コカ・コーラ シークレット・メッセージ」はまさに企画自体がアイデアになっていると思います。コカ・コーラの液色と同じ色のペンを商品に付け、そのペンで購入者にペットボトルにメッセージを書いてもらって、誰かにプレゼントするという企画でした。飲み干すとメッセージが読めるようになる、というのがポイントです。

高田:それは面白いですね。「企画になっているか」というのはどういうことですか。

富永:単なるアイデアだけの思いつきでなく、アイデアを消費者に届けるための仕組みがあるかどうか、です。

高田:では、売り上げにつながるか、ビジネスのパフォーマンスに影響をもたらせるかというのは、何か特定の指標などがあるのでしょうか。

富永:企画の評価時に、ここは必ず見るといったKPI(重要業績評価指標)は、私はありません。むしろ設けないほうがいいと思っています。というのは、KPIが一人歩きしてしまうためです。実施企画のレビュー時に、本来もっと着目すべき点があっても、KPIがあると紋切り型の判断になってしまいます。

高田:ビジネスへのインパクトはどのように見ておられるのでしょう。

富永:企画ごとに設けています。「今回の企画は売り上げを狙ったものだ」「認知度の向上だ」というふうに。いろいろな目的とその組み合わせが重要なので、いつでもこのKPIというふうに定めているわけではないということです。

ただ最近、特にオンライン広告の界隈では、ブランディングのための広告と、売り上げをつくるためのセールス広告というのを分けているようですが、あれはものすごく間違った問いの立て方だと思いますね。売りを作るための広告だとかどうとかの位置づけは、企業の中でしか通用しませんから。

消費者にとってはどんな目的のコミュニケーションであろうとその会社の一部なので、ブランドの決めごとに添わない企画はイメージを意図しない方向に変化させてしまいます。注目を集めたいからと行って、フェラーリがふんどし姿の男をバナー広告に出していたらおかしいということです。

なので、ブランディング広告というものはなく、すべてはブランド構築につながる、と考えています。

次ページ 「企画提案時に「松」「竹」「梅」を用意するのは愚策」へ続く

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