熱狂的ファン層はブランドにどう役立つのか?―『カメラを止めるな!』と熱狂ブランドの共通点

世界観とは顧客とのコミュニケーションの一部である

つまり熱狂的ファン層を得るブランドの構築ステップとは、さきほど解説した熱狂的ファン層の役割をふまえて、下記の順序になると言えるでしょう。

1. ブランドが顧客と目指す価値観を明確にする
2. ブランドと同じ価値観を有するコア顧客とつながりをもつ
3. 上記に沿ってコア顧客の求める独自の価値を持つ商品を提供する
4. ブランドとコア顧客が直接コミュニケーションする仕組みを通して継続的に商品を改善、提供する
5. 上記のコミュニケーションがコア顧客でない新規顧客にも伝わる方法をもつ

前述の『カメラを止めるな!』の場合は、映画というエンタテインメントビジネスのため、ブランドがもっとも恐れたのは実はネタバレでした。しかしファン層の口コミを見る限り、この映画の魅力を伝えるためには最大限ネタバレをしないように努力をしていたことが伺えます。それは映画制作者側と顧客が見事に世界観を一致させていたからだと言えるでしょう。

世界観とは、ブランドと顧客が価値観を共有する際に、知識やノウハウのような理性的な面だけでなく感覚的、情緒的な特長を体感することを目的として使われる言葉です。熱狂的なファン層とはこの世界観を共有することが今後のブランドのキーワードになるでしょう。

個人のファンから、世界観のファンへーー『krm』に聞く、ブランドの立ち上げから継続していくために大切なこと
(kakeru 2018 12.26記事より引用)

このブログにあるように、自分のアクセサリーブランドkrmをソーシャルメディアを通して、丁寧に育ててきたKURUMIさんは、自身のブランドの世界観をもっとも重要視しています。その理由は決して売り上という目標を達成することではなく、ファンとブランドを盛り上げている感覚であることは、いま熱狂的ファン層をブランドが育成すべきという真の動機と同じかもしれません。

同様に彼女はその流れが顧客とブランドとの新しい関係であることを実感しているようです。

「今は購買動機が変わっていく時代だと思っていて、安いとか便利ではなく、その世界観が好き、とか信頼されてるから買おう、という風に変わってきています(KURUMI)」という発言のとおり、世界観はすでに顧客との新しいコミュニケーションであり、大きな価値提案のひとつになりつつあります。そのような顧客は言うまでもなく、従来の顧客ではなく新しい関係をブランドと求めようとするミレニアルズに代表されるような世代であることは間違いないでしょう。

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鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)
鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

鈴木健(ニューバランス ジャパン マーケティング部長)

1991年広告会社の営業としてスタートし、ナイキジャパンで7年のマーケティング経験を経て2009年にニューバランス ジャパンに入社し現在に至る。ブランドマネジメントおよびPRや広告をはじめデジタル、イベント、店頭を含むマーケティングコミュニケーション全般を担当。

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