CES 2019が、米国・ラスベガスで始まりました。CESは4500を超える出展企業、150以上の国から18万人以上の参加を見込む、世界最大規模を誇るテクノロジーの祭典です。CESは50年の歴史がありますが、今日ではかつての家電ショーの位置づけから、テクノロジーのイベントへと変貌を遂げています。
CESではスマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、AR/VRなど、これからのビジネス環境に大きく影響を与えるテクノロジーや先端的な取り組みに触れることができます。ここで触れることができるテクノロジーは、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても重要な示唆が多く発信されています。今年も、「アドタイ」視点で現地から森直樹が最新情報をお届けしていきます。
今年の注目はやはり5Gと自動車
年の初めの大型イベント、今年もCESの季節がやってきた。2019年の開催期間は1月8日〜11日だ。
さて、今回も「アドタイ」恒例の広告会社視点から、CESの現地レポートをお届けする。
現地レポート初回は、CES開催に先駆けて行われるプレス発表会(6日〜7日)の中でも、特にCTA(全米民生技術協会)アナリスト視点からの今年の見どころについて触れたいと思う。
米国でテクノロジーによるライフスタイルへの影響について、啓発をしている団体であるLiving in Digital Timesの共同創業者のRobin Raskin氏によるプレゼンテーションから今年、注目すべきテクノロジートレンドについて説明があった(Robin氏による注目ポイントは下記の写真を参照)。中でも私が興味を持ったのは、機械同士がお互いに対話するIoTの世界の可能性、テクノロジーについて障壁のない全ての領域におけるパーソナライゼーションの可能性だ。
デジタルからデータの時代へ突入
今年のCESの動向についてメディア向けに説明するセッションである「CES 2019 Trends to Watch」から今年の注目ポイントを紹介したいと思う。CESの運営者であるCTAのリサーチ部門のバイスプレジデントSteve Koenig氏によれば、「コンシューマーテクノロジーは急速に新しい時代に向かっており、2019年はコンシューマーテクノロジー業界の過渡期が終わろうとしている」と訴えた。
同氏は、コンシューマーテクノロジーはデータの時代に急速に向かいつつあり、消費者の意思決定はデータによって支えられ、データが消費者をサポートしている。今年のCESは、どのセッション、どの展示ブースも根底にあるテーマは“データ”であるとの持論を展開した。また、中国のプライバシー問題や欧州でのGDPRなどの話題に触れて、データがエコシステムの中心になるに従って、直視するべき新たな問題であると触れている。
また、Steve氏は2000年代に起こった、デジタルの時代は2020年にはデータの時代になることを示唆している(下記の写真を参照)。
5GとAIが重要な要素になる。
Steve氏に続いて、CTAのイノベーションアンドトレンドのシニアディレクターであるBen Arnold氏が今年の重要なテクノロジーの大きな流れについて解説した。Ben氏は、5Gがテクノロジー業界の全てに影響を及ぼすと、その可能性について解説し、「5Gは携帯電話のスピードを促進するだけではない。5Gは、デバイス同士を接続し、必要な目的のために、素早く作動できる能力を持つことが、今後のテクノロジー業界での最大の差別化要因である」と主張した。
筆者はすでに2日間に渡って記者発表会に参加しているが、5Gへの期待やアクションについて多く触れている。5Gについては、以後のレポートでも触れたいと思う。
また、リサーチディレクターのLesley Rohrbaugh氏は、「5Gと並んで今回のCESでの重要な要素のひとつはAIであることは間違いない」とAIに注目するよう促していた。特に、家電や自動車などへの活用、デジタルアシスタンスについて触れている。
CTAの調べでは、消費者の行動は確実に音声にシフトしており、ネット検索からメッセージの送受信に至るまで多岐に渡っている。さらに、今後は第4の消費チャネルなるというのだ。さらに、今年発表される多くのスマート家電は、AIによるスマートアシスタント(特に音声対話)機械と人がお互いに連携を開始している例を多く目撃するだろうと、AIへの期待を表していた。
本格化する5GとAIによるエコシステムはオープン化が鍵
筆者はプレスデイを経て、この数年間、注目をされ続けてきた5Gがテクノロジーの中核技術になる大きな流れを感じ取ることができた。また、AIが中核プラットフォームとして機能し始め、製品やサービスの“体験”設計の重要な要素となっていると実感した。昨年同様に、5GやAIによるビジネス構造の変化について示唆が多く得られるだろう。
米国企業では、AIや5G、自動運転などの新興技術について、個別の技術や製品の可能性、プロダクトは語られず、プラットフォーム、エコシステム、そして社会構造の変化への対応について語られている。日本のマーケターや商品開発に携わる読者の皆さんは、このトレンドの本質を理解し自社に取り入れる必要に迫られるだろう。
2019年CESレポートでは引き続き、テクノロジーがコミュニケーションやマーケティング活動そのものに与える影響について、レポートしていきたい。
レポート
森直樹
電通 CDC エクスペリエンスデザイン部長 クリエーティブディレクター
光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。 日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST (INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia (PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo 公式スピーカー他、講演多数。