本レポートでは、広告会社でありながらも、広告にとどまらない施策でクライアント企業のビジネス課題を解決し成長を続け、広告業界の慣例的なビジネスモデルをディスラプトするR/GAの成長の秘訣を紹介する。
企業の成長を助けるトランスフォーメーション企業
R/GAはもともとモーショングラフィックスを専門とするプロダクションであったが、その後何度かの変革を経て、統合型デジタルエージェンシーへと進化した。現在、世界に18拠点を構えている。
マーケティングの世界にディスラプションという概念を広めた同社の創業者であるボブ氏に話を聞いた。「R/GAはコンサルティング、テクノロジー、デザインがコアである。ディスラプティブな成長の結果、収益がイノベーティブ・プロダクトとサービス、コンサルティング、リコンストラクト・モデル(ベンチャー育成)で構成されるようになった。また、ロボティクス技術やIoTを含めたテクノロジーとリアルの融合など、すでに実在する新しいサービスは、コンサルティング業務を行う上で有望な分野だ」という。
続いて、同社の経営戦略をグローバルで統括するバリー氏に、より詳細なプロジェクトケースを聞いた。
バリー氏は、クライアント企業の成長を助けることが同社の役割だと語る。「成功している企業は、自社の活動や価値が全てテクノロジーの上に成り立っている。データの活用、インターフェースのデザインを通じて、ブランド体験をカスタマイズして提供している」という。
「今すぐ変化しなくてはいけない時代、最も大事なことはスピードだ。R/GAは3つのレイヤーで変化を支援している。①ビジネストランスフォーメーション、②エクスペリエンストランスフォーメーション、③マーケティングトランスフォーメーションの3点だ」(バリー氏)。その中で、①のビジネストランスフォーメーションに関する、3つの事例を説明した。
そのひとつが「Next Bank」の事例だ。ブラジルのメガ・バンク ブラテスコ社に対する、ビジネストランスフォーメーションの事例である。
「若者の人口は増えているのに銀行口座を持つ人が減少しているという課題があり、その背景には、若い人のニーズに合わせた銀行がないことと、銀行に自分のお金が吸い取られてしまうという負のイメージがあった。そのため、デジタルネイティブに向け、銀行の体験価値を変えたモバイルアプリとしての新しい銀行をつくった」と説明した。同施策は、若者のインサイトを捉え、1年で50万件の新規口座開設を獲得し、今も続いている。
同社が、ビジネストランスフォーメーションのコンサルティングを多数手がける背景について「クライアント企業のCクラスにとって、コンサルティング会社と進めているプロジェクトが難航した際の相談相手というブランドポジションを獲得できたことが大きく寄与している。クライアント企業の変革をスピード重視で行い、先方のCEOやCMOから評価されることが今のポジショニングにつながっている」と述べた。
2019年度の本視察研修「Business Creation Lab. in New York」は9月22日(日)から9月29日(日)に開催予定です。最新情報は、Webサイト、またはメール(info-educ@sendenkaigi.co.jp)までお問い合わせください。