P&G、ロレアル、J&J…エレクトロニクス企業以外の出展が目立つ
パーソナライゼーションの動きは、こうした代表的なエレクトロニクス企業だけに留まるものではありません。「コンシューマー・エレクトロニクスショー」と聞くと、生活を便利・快適にしてくれる家電の展示会を想像してしまいがちですが、今や健康な生活を送るための商品・サービスを提供する企業のCESへの出展が増えています。
バーチャルリアリティを活用したトラウマの治療やセンシングによる睡眠の質改善、お肌のケア、赤ちゃんの成育サポートなどがこれらにあたります。先述のJohnson & Johnsonだけでなく、ロレアルやP&Gといった企業も参入を始めています。特にP&Gはプレス向けのイベントを個別に開催するほどの力の入れ様。
イベントでは、デジタルテクノロジーを重要なテーマと捉え、今後パーソナライゼーションに取り組んでいくことを発表しました。今回紹介されたSK-IIやGilletteなどの事例はまだまだ初歩的なパーソナライズの内容ではありますが、ユーザーそれぞれの髭剃り時の肌の温度や歯磨きの癖など、P&Gが大切にする、「真実の瞬間」の2番目(消費者が商品を利用する瞬間)において、彼らが直接ユーザーのデータを蓄積しパーソナライズされた体験を提供し始めた点は注目です。
この様にデジタライゼーションがもたらすパーソナライゼーションはエレクトロニクスやIT企業だけの話ではなく、21世紀を戦う全ての企業に関係していくことだと考えられます。そのため、今回紹介したFMCG企業の様な動きは今後更に加速していくと予想されます。デジタルを活用してデータを駆使しパーソナライズされた商品・サービスを提供していく。2020年代のマーケティングの重大テーマになりそうです。
玉井博久
Glico Asia Pacific Regional Creative & Digital Senior Manager 兼 江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー
デジタルを活用したマーケティングイノベーションでカンヌライオンズなど受賞多数。現在シンガポールでブランド構築とEコマースの融合に取組む。また米国・韓国・台湾・中国・アセアンにおけるグローバルブランドの広告を統括する。著書『宣伝担当者バイブル(宣伝会議発刊)』は若手宣伝部員・初中級マーケターに好評。