データ時代に勝ち残るのは、信頼できる企業だけ — 「CES2019」現地レポート②(玉井博久氏)

『マイノリティ・リポート』の世界が現実になる!?

2000年頃を境に、私たちはお金ではなく、個人情報を“支払って”色々なサービスを享受するようになってきました。しかしあらゆるデータが取得されるようになり、AIによってそれらの大量のデータが一瞬で分析されるようになってきた今、生活者の全ての行動・状態は筒抜けになっていきます。

例えば、現在ですら条件が揃えば、SNSのたったひとつの投稿から個人名や住所を特定することもできてしまいます。これから4Gから5Gの世界になることで、これまで以上に大容量のデータを短時間で伝送・蓄積することが可能になります。そうすれば、私たちがいつどこで何をしてどんな状態になっているのかを、至るところに設置されたカメラやセンサーを通じて明らかになります。まさに映画の『マイノリティ・リポート』や『CIRCLE』に描かれている世界です。

インテルが紹介するセキュリティカメラはリアルタイムに何が映っているかを把握。

データ時代に必要なのは、信頼される企業になる努力

さらには今までにない自分に必要なサービスを利用するために個人的なデータを提供していく機会も増えていくでしょう。例えば自分が病院にかかった診断情報や自分の赤ちゃんの排出物のデータ、母乳のデータ、尿のデータなどです。本来なら他人はまず知ることのないこうしたデータを提供することで、健康な生活や健やかな成長を私たちはこれから享受していくことになりそうです。

赤ちゃんに、より良い母乳を十分に提供できるようにする商品。

そうしたデータ時代において、生活者はどの企業と付き合って生きていくべきかをこれまで以上に考えることになります。必要とするサービスを利用するために自分の、あるいは家族の個人的な情報をいったい誰に提供するのかを考えるようになるということです。その時に選ばれる企業は、信頼できる企業です。この企業であれば、個人的なデータを提供しても大丈夫、そう思ってもらえる企業だけが顧客データを取得することができ、そしてパーソナライズされた商品・サービスを提供できるようになるのです。

さらにAIを活用したディープラーニングにより、商品・サービスを利用してもらえばしてもらうほど、より良い体験をお客さまに提供し続けることができるようになります。

尿の状態を把握する商品。

2020年代はもうすぐ近くまで来ています。この企業であれば、情報を提供しても良いという信頼を得なければデータ時代に戦えなくなります。信頼を得続けるために、企業は何に取り組んでいくか。データ時代だからこそ考えなければならないテーマです。

玉井博久
Glico Asia Pacific Regional Creative & Digital Senior Manager 兼 江崎グリコ アシスタントグローバルブランドマネージャー

デジタルを活用したマーケティングイノベーションでカンヌライオンズなど受賞多数。現在シンガポールでブランド構築とEコマースの融合に取組む。また米国・韓国・台湾・中国・アセアンにおけるグローバルブランドの広告を統括する。著書『宣伝担当者バイブル(宣伝会議発刊)』は若手宣伝部員・初中級マーケターに好評。

 

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