運動神経の悪い人が勝つ!?「ゆるスポーツ」誕生秘話(ゲスト:澤田智洋)【前編】

運動神経の悪い人が勝つ「ゆるスポーツ」を考案

中村:すごいですね。広告が苦手でもいられるという電通の懐の深さがいいですよね。

澤本:だって、『そうして私たちはプールに金魚を、』という映画を撮った長久允もいるじゃない。彼は今、電通で映画監督やってるからね。電通の社員で、業務が映画監督なの。

中村:いいですね。いろいろ聞いてみたいんですけど、このスポーツクリエイターはどんなことなんですか?「世界ゆるスポーツ」とはどんなものなのか、教えてください。

澤田:僕はコンプレックスの塊で、結構生きるのが辛いタイプなんです。海外で13年ぐらい暮らしてたんですけど、白人が苦手という致命的なコンプレックスがありまして。心が通わないというか、苦手だったんですよ。中学校のとき、フランスのイギリス人学校という厄介な学校に行ったんですけど、1年間で二言ぐらいしか学校でしゃべらなかったぐらいで。

そういう人生を歩んできたので、自分がどうやったら輝けるかなと思って、輝いていそうな広告代理店に入ったら、当然みんな輝いていて、その中でもどんどんマイノリティになっていって。でも、広告代理店ってアンチテーゼをテーゼにするのがうまいというか、要はマイナスをポジ転換するプロ集団だと思ったんですね。

だったら自分のコンプレックスもポジ転換すればいいんじゃないかと。僕は数あるコンプレックスの中でも悩みだったのが、スポーツが苦手で。

澤本:あ、苦手なの?

澤田:そうなんです。足が遅いんですよ。小学校5年生のときにTくんというクラスで一番足が早い男性がいて、モテてたんですよね。いまだに彼のことを恨んでるんですよ。

中村:わかります。僕もむちゃくちゃ遅かったから。足の速い藤田くんという団子屋の息子がいたんですけど、壮絶に覚えてますよ。団子屋のくせにめちゃくちゃ速い。こう言ってる僕も、とんかつ屋の息子なんですけど。

権八:それ、よくないよ(笑)。いいじゃない。団子屋もとんかつ屋もいいよ。尊いよ。

中村:小学校の頃ってありますよね。足の速い子に対する憧れ、コンプレックスが。

澤田:あります。でも、スポーツ庁が出しているデータによると、日本人の49%が運動してないんですね。つまり、運動にコンプレックスを持ってたりする人達なんです。だから運動が苦手なのは僕だけと思っていたら、日本人の2人に1人はそうだったと気づいて。だったらそっちの人達が楽しめるスポーツ自体をつくっちゃえばいいんじゃないかという広告代理店っぽいブレイクスルーみたいなことをしまして。

中村:じゃあ、必ずしも運動神経が良い奴が勝つということではないと?

澤田:そうですね。むしろ運動神経の悪い人が勝つような設計、ゲームデザインをしてます。たとえば「ハンドソープボール」というスポーツを初めにつくったんですけど、ベースになっているのはハンドボールで、基本的には手でパスしてシュートをすると。ハンドソープボールはそこにハンドソープが追加されて、試合開始とともにスターティングソープというのをみんな手につけるんです。それが尋常じゃなくヌルヌルして、試合中にボールを落とすとアディショナルソープをつけて。

権八:追加でね(笑)。

澤田:ハンドボール経験者は普段の癖でボール投げちゃうんですよね。そうすると逆にツルッとボールを落として。ハンドボールをやったことがない人のほうが大事にボールを扱うので、うまかったりするんです。

権八:面白い。さっきちらっと見たら「ベビーバスケ」というのがあって、赤ちゃんたちとバスケするのかなと思ったら全然違うんですよ。何だと思います?

澤本:え、赤ん坊をつくの(笑)?

権八:そうじゃないんだけど、それに近くて。赤ん坊のようにボールを大事にしながらするバスケみたいなことですよね?

澤田:そうです。ボールにセンサーを入れていて、激しく扱うとボールがエーンと泣いちゃうんです。

一同:(笑)

澤田:泣くと相手ボールになるんです。だから、これは球技がうまい人が勝つんじゃなくて、母性がある人が勝つんですよ。子育て経験のある主婦層のほうがボールに感情移入するので、うまいんですよね。NBAの2メートルぐらいある選手は普段の癖でフェイントをかけちゃうので、その瞬間、ボールがオギャーと泣いてしまう。

次ページ 「「薬みたいなスポーツをつくりたい」から生まれた「トントンボイス相撲」」へ続く

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