コピーライターは「一過性の言葉」ではなく「言葉のインフラ」をつくる人達(ゲスト:澤田智洋)【後編】

広告代理店の強みは「ポップ化力の高さ」

中村:いろいろリサーチしていて、この型のこの口説き文句はすごいというもの、これは意外とめっけもんだぞという口説き文句、何か覚えてらっしゃったりします? 

澤田:タモリさんが赤塚不二夫さんの葬式の弔辞で話していた、「私もあなたの作品です」というのはすごい口説き文句だなと思いましたね。あれも僕の中では口説き文句にカテゴライズされていて。

澤本:口説き文句はどうやって収集するんですか?知り合いに聞いたりするの?

澤田:SNSや日常で見たものを収集して体系化して。本当に広告をつくるときの広告手法を体系化することと全く同じパターンに落ちていくんです。それが面白いですね。ネガをポジに転換するという。

権八:それ、本出したら売れそう。『伝え方が9割』のように。

中村:あと下世話な話ですが、女の子ともっとお近づきになりたいとき、ここで決め言葉になるという口説き文句はありますか? 権八さん、知りたいでしょ?

権八:全然知りたくない(笑)。だけど、クライアントを口説いたり、この前来ていただいた幻冬舎の見城徹さんもどうやって大物作家を口説くか、ということをおっしゃっていて。仕事って確かに言われてみれば、口説くことですもんね。

中村:見城さんは好きな作家の小説を1章ぐらい丸々覚えていって、それをずっと目の前で読んだら、「わかった、書いてやるよ」と。権八さんはどうやって今の奥さんを口説いたんですか?

権八:まだ口説けてないかもしれない(笑)。澤田さんは口説き文句が上手になった結果、モテてるんですか?

澤田:どうなんですかね。わからないですけど。

権八:ちょっと照れてますね。これ、モテてますぞ、みなさん。

澤田:ただ、「ゆるスポーツ」にいっぱい仲間が集まってくれてるのは、どこかで口説けているのかなという気がします。僕は自分の弱さ、ダサさを出すようにしていて。みんな結構かっこつけるじゃないですか。でもかっこつけてる人ってみんな同じに見えるというか、区別がつかなくて。弱さのほうがダイバーシティがあって、弱さを発露していただけるとインパクトが残ります。だからそこは意識していて、自分がみじめなところは誰に対しても全部言うようにしてます。

権八:自分はコンプレックスの塊でとおっしゃるところにみんな掴まれますよね。でも、経歴見るとそうは見えなくて、幼少期はパリ、シカゴ、ロンドンに住んでいたと。かっこいい。

澤田:それは単純に親の仕事の関係なんですが、本当に白人が苦手だったし。僕はトルストイの言葉が好きで「幸せそうな家族は似通ってるけど、不幸せな家族はそれぞれの様相を呈している」というのがあって。つまり、幸福な家族は映画で描かれるときも、四人家族で大型犬がいて、暖炉があって、ケーキがあってと似ていますよね。

でも、不幸な家族は描き方が多様です。その言葉が僕の背中を押してくれました。だから僕が弱さをあえて出しているのは、それが僕だと思ってるわけです。そこが他者と被らない僕らしさであると。障害がある人の障害はある意味で弱さなんだけど、その人らしくて素敵だなと。もっとみんなが弱さを表に出して、あの手この手で大人たちが弱さを強さに変えていく社会になると楽しいと思います。

澤本:弱さを強さに変えることが広告力を使ってやれるということですよね。

澤田:そうですね。広告代理店のよさっていろいろあるんですけど、「ポップ化力の高さ」ですね。あまり知られてない商品、事業、企業をメジャーにする、認知を上げていくこともそうだし、今まで発掘されてなかった商品、事業の魅力を思わぬ角度から切り出して。そういうポップ化です。それでいろいろな人との接点をつくっていって、そのポップ化力はいろいろなところで生かせると思います。

中村:いいですね。特に世界ゆるスポーツはそれこそオリンピックのような、ゆるリンピックみたいなものになってほしいですよね。運動神経がよくない人が何かの人間力で勝てる競技ばかりを集めて。オリンピックだって神が決めたものではなくて、とりあえずこのあたりがスポーツと言えるんじゃないかというものだし、年々競技自体が変わってるわけですしね。

権八:ルールもしょっちゅう変わるしね。

次ページ 「誰でも世界的な「ゆるスポーツ」の発明家になれる?」へ続く

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