働き女子たちの「ごはん」事情
私たちを短気にしているのは当然、Amazonだけではない。
「中食」という言葉がニュースで度々使われるようになって数年が経つが、コンビニを中心に、ここ数年、「中食」のレベルは驚くべきほどに高まっている。最近では多くのバズメディアで、「○○のコレがびっくりするほどウマい!」とクオリティの高さを紹介する記事をよくSNSのタイムラインで見かけるようになった。
マクロな視点で見ても、中食市場は大きく成長しており、日本惣菜協会が発表した「2018年版 惣菜白書」によると、2017年には惣菜市場規模が10兆円を超えている。
料理上手な女友達が「休日はご飯を作るけど、平日は帰宅が遅いからつまみみたいなものをコンビニで買っちゃうんだよね。これがすごいオイシイの」と話していたのを聞いてから、私もコンビニで中食を買うようになったが、これが本当に「手軽に作れて」「美味しくて」「安い」。自炊はもはや“趣味としてすること”なのかもしれないとまで思えてくる。
中食といえば、「出前館」「LINEデリマ」「Uber Eats」などのサービスも含まれる。この間同僚とランチに行ったら、3分の1が「休日はよくデリバリーを頼む」と話していた。特にひとり暮らしの女性が手を上げていた。私も引きこもって原稿を書く休日はもっぱらデリバリーだ。
今では、家の中でお腹が空いた時、「外に行くのは面倒。もはや料理するのも面倒。今すぐ食べれるものが届いてほしい」というずいぶん怠惰で気の短い考えをするようになってしまっている。
欲望以外、何も用意したくない。「ズボラ」な私たち
私たちの短気は止まることを知らない。
衣食住だけでなく、エンターテインメントについても「簡易化」「スピード」を求める。昨年の夏に流行った「ストロングゼロ」の流行、そして高アルコール飲料の度重なる発売は、「安く早く酔いたい」という欲望の現れではないだろうか。
最近は、旅行の行程をAIがレコメンドしてくれるサービス「Deaps」や、行き先さえ決まっていなくても旅行について相談できる「ズボラ旅」など、とにかく「どこか行きたい」という要望から最短距離で実現まで導いてくれるサービスが次々とリリースされている。私達はもはや「どこかに行きたい」以外、考えたくないのかもしれない。
私たちは大量の情報を日々処理している。大量の欲望が頭の中を通り過ぎて、時々渦巻いては消えていく。煩雑なステップがあるようなサービス設計では、欲望が叶う頃には、もっと簡単に快楽を得られる別のことがしたくなっているかもしれない。叶えるのに3日以上かかるなら、そんな欲望は忘れてしまっているかもしれない。私たちは「○○したい」という欲望以外、何も用意したくないのだ。
選択肢が数え切れないほどある中で、待たせる時間はただただユーザーの不満を募らせるばかりなのである。