「CES 2019」現地レポート⑤ — マーケターがテクノロジーに向き合う理由(森直樹)

CES 2019が、米国・ラスベガスで始まりました。CESは4500を超える出展企業、150以上の国から18万人以上の参加を見込む、世界最大規模を誇るテクノロジーの祭典です。CESは50年の歴史がありますが、今日ではかつての家電ショーの位置づけから、テクノロジーのイベントへと変貌を遂げています。

CESではスマート家電に始まり、モバイル、自動車、ロボティクス、IoT、AI、AR/VRなど、これからのビジネス環境に大きく影響を与えるテクノロジーや先端的な取り組みに触れることができます。ここで触れることができるテクノロジーは、ライフスタイルを大きく変化させることは間違いなく、マーケターにとっても重要な示唆が多く発信されています。今年も、「アドタイ」視点で現地から森直樹が最新情報をお届けしていきます。

テクノロジーがこれまでになくライフスタイルに影響を与える。

CES2019のレポートも、この5回目で最終回だ。CES2019を振り返ると、5G、AI、音声アシスタンス、ロボット、自動運転技術による新しい自動車の姿など、多くのテクノロジーに触れることができた。しかし今年のCESは、“技術そのもの”よりも“エクスペリエンス”に焦点が当たっていたのではないか?と私は考えている。

特にAI及び音声アシスタンスは具体的なサービスやプロダクトに実装され、巨大なエコシステムを築き始めていた。LGやSAMSUNGは独自のAIプラットフォームを持ちながら、GoogleやAmazon、Appleのプラットフォームとの接続を行い、ユーザーの体験価値最大化を図っている。

数年前、SAMSUNGはSmartThingsを買収し、オープンで接続された環境のコネクテッドホームの提供について取り組みを開始した。LGもThinQ AIを彼らの製品の中核に置いた戦略を取り始めていた。今年のCESは、数年前からの取り組みが結実し始めた最初の年なのでは、と私は考えた。

マーケターはテクノロジーがもたらす新たな体験を想像しなければならない

今の技術トレンドは、これまで以上にマーコム業界へも影響する。具体的には音声対話技術の進展や、AIの発達、5Gの市場ローンチといった出来事は、新たな顧客体験をもたらすだろう。LGはAIを活用したカスタマーサポートの新たな可能性、AIを媒介に家電とEC(Amazon)が直結する世界について触れていたし、5Gは生活者の情報接触態度を激変させるかもしれない。

また米国ではSAMSUNG、LGともにテレビは、ますますIP配信が影響力を増すだろうと感じた。CES内で開催された、CMOセッションにおいて、GE Appliance(家電メーカー)のCMOは、2020年のCESでは、マーコムの中心的な話題としてのテレビの影響力はこれまで以上に小さくなるだろうと語っていた。

そして、FMCG企業がテクノロジーに大きな可能性を見出していることを、ユニリーバやP&Gによる出展や記者発表会を通じて体感できた。テクノロジー業界で働くマーケターのみならず、すべてのマーケターがテクノロジーに向き合い新たな顧客体験の構築を考えることの重要性について、今年のCESは示唆をもたらしたのだ。

P&GのChief Brand OfficerのMarc Pritchard氏とChief Research, Development and Innovation OfficerのKathy Fish氏による発表の様子。

レポート

森直樹
電通 CDC エクスペリエンスデザイン部長 クリエーティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。 日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST (INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia (PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo 公式スピーカー他、講演多数。

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