共感のヒント~抽象化し相手を理解したうえで表現する、伝え方の新しいフレームワーク【りょかち×井上大輔】 後編

価値観が多様化する社会で求められる「伝える力」

りょかち:海外の方とコミュニケーションを取る時にも、たとえを使って説明するスタンスはとても大事だと言われたことがあります。

井上:私は外資系企業への勤務が長いので、仕事柄いろんな国の人と英語でコミュニケーションを取りますが、ノンネイティブ同士だったりすると英語でのコミュニケーションは厄介なことが多いので、アナロジー(たとえ)がうまい人が評価されやすいです。

りょかちさんは聖書を読んだことはありますか?

りょかち:いえ、ありません。

井上:聖書はたとえ話だらけなんです。これも、中東の人がヨーロッパのギリシアやローマにキリスト教を布教する時に、言葉や文化、宗教に対する考え方などがまったく違う国々の人に、自分たちの考えを伝えなければならなかったからなんですよね。まさに我々が今直面している、外国人とどうコミュニケーションをとればいいのかというシチュエーションと同じです。キリスト教が世界中に広まったのは、福音作家たちの「たとえる力」によるところが大きいんです。

そう考えると、我々に今必要な力は、英語力というよりも、さっきのフレームワークそのものかもしれません。この能力を身に着けることの方が、英語力なんかよりももっと大事。

りょかち:すごくよくわかります。今はいろんな価値観がある時代で、同じ日本人の中でさえいろいろな考え方があります。そういう時代だからこそ、いったん骨格を抜き出して抽象化して、相手にわかりやすいように具体化する力が大事になるということですよね。

井上:昔はこういう能力が取沙汰されることはありませんでした。やはり国際化やソーシャルメディアの普及で、誰にでもわかりやすく伝える必要性が出てきたからでしょうか。

りょかち:ツイッターもインスタグラムもテキストメディアですからね。伝える能力を使う場面はたしかに増えています。そういう中で、自分の気持ちを思うように伝えられなくて悩んでいる若者はけっこういます。

井上:そうしたらこのフレームワークは多分役立ちますよ。グローバル社会の中で多様な価値観の人たちに気持ちを伝えるには、英語力よりもこのフレームワークのような力を磨くほうが近道だと思います。

りょかち:そのとおりですね!


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