嵐の活動休止、広報のプロが分析「自分たち流の会見を実行した、5人の意志と清々しさ」

5人は大人の事情や会見ルールを排除した

1月27日、国民的アイドルグループ・嵐が「活動休止」の会見を行ったことは記憶に新しい。ここでは、広報的側面から会見のポイントを述べてみようと思う。「どうして活動休止?」といった芸能ニュース的な側面を全部排除し、素直に記者会見を分析してみる。

会見開始後、まずはびっくりしたのは、嵐のメンバーがジャケットとパンツで登場したこと。しかも全員がトータルコーディネートされていた。筆者は、スーツ姿で登場すると思っていたのだが、その予想と違っていて逆に驚いた。

通常、記者会見には、”こうすべき”という誰が決めたか分からないが「大人の事情のルール」がいくつもある。そんな”べき”を排除し、次のような5つの意志を通したのだろう、と分析することができる。

(1)謝罪会見ではない。次へのステップを伝えたい
(2)「活動停止させられたわけではない」というメッセージ
(3)記者との距離を近づけるために、着席ではなく立った会見
(4)何を言われても気にしない強さと感情のコントロール
(5)「嵐」は自分たちで決めてコントロールできる、という思い

その1の意志
謝罪会見ではない。次へのステップを伝えたい

ジャケット&パンツ姿のトータルコーディネートの5人を見て思い出されたことがある。同じジャニーズ事務所の先輩であったSMAPが2016年1月、テレビ番組『SMAP×SMAP』内で騒動に対して謝罪した場面だ。全員黒のスーツにネクタイ姿だった。それはそれでトータルコーディネートされていたのだが、今回とは大きく違う。

普段から衣装としてスーツ姿をトレードマークにしていた芸能人ではない場合、スーツを着て登場するということにはある意思がある。それは、「申し訳ない」という謝罪の意を伝えたい、あるいは「正装でなければ失礼である」ということ。SMAPの場合もそうだっただろう。

だが、今回は大きく違った。謝罪でもないし、言い訳でもない。単純に思いを伝えたかったのだろう。だから”嵐らしいファッション”でコーディネイトして会見に挑んだのだろう。

その2の意志
「活動停止させられたわけではない」というメッセージ

全体的に伝わった雰囲気は、「謝罪会見ではない」「活動停止をさせられたわけではない」という意識だ。前出のSMAPの場合は、諸事情で解散という結果になった。もしかすると「解散させられてしまった」という思いもあったのかもしれない。

だが、今回、嵐のメンバーは1年半もの時間をかけてメンバーや事務所サイドが練りに練って至った結果であると発表されている。

そのために、冒頭からリーダーの大野智さんが、活動休止に至る”プロセス”から説明を始めた。2017年6月に大野さんがメンバー全員に「話がある」と声をかけ、自分の意志を伝えたところから時系列で説明したのだ。

それによって「なぜ休止なのか?」という疑問がほぼ排除された。見ていた筆者も「分かる気がする」と同調できる印象になっていた。

その自然体な様子を見ながら、筆者はある2つのことを思い出した。古い話で恐縮なのだが、当時大人気のアイドルグループ、キャンディーズが1977年7月、コンサートツアーの初日の日比谷野外音楽堂のコンサート終盤、3人が急に抱き合って号泣し始め、ラン(伊藤蘭さん)が口火を切ったのを思い出した。

「私たち、皆さんに謝らなければならないことがあります。私たち、今度の9月で解散します!」。彼女たちが放った言葉「普通の女の子に戻りたい」という言葉は僕の記憶にしっかり刻まれている(ちなみに筆者はミキこと藤村美樹のファンだった)。

今回の嵐の大野さんも同様に「違う世界を見てみたい!」「自由な生活をしてみたい」という言葉を述べている。

もう一つは、1980年の山口百恵さんの引退である。いずれも本人の強い意志をメッセージに入れ込んで会見でマスコミに伝えた。決定事項を伝えた。心の整理はすでに終わっていた感じがした。

嵐のリーダーの大野さんをはじめとする強い意志を、時間のある限り丁寧に説明をしてゆく姿を見ながら、キャンディーズの解散や山口百恵さんの引退を思い出したのは筆者だけではないだろう。この三者に共通するのは「清々しさ」である。

武士道というのには大げさだが、大リーガーのイチロー選手の意志の強さに共通する清々しさ、清らかさを表現できたという面で高評価である。心の整理整頓が終わって、それをありのまま公表した感じが伝わった。

次ページ 「その3の意志」へ続く

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野呂 エイシロウ(放送作家・戦略的PRコンサルタント)
野呂 エイシロウ(放送作家・戦略的PRコンサルタント)

学生時代からマーケティングに従事。
テレビ番組の構成をしつつ、CM制作やPR活動にもかかわるようになり、
外資系・大手企業を中心に50社以上をコンサルティングを行う。
マスコミ側からの視点で斬新なアイデアを提案し、
数多くの業界世界No.1企業のコンサルティングで結果を残す。

Twitter、フェイスブックなどのSNSを通じて、
コンサルタントや講演依頼されることも特徴の一つ。

著書に『終わらす技術』(フォレスト出版)
『テレビに出て売り上げ100倍にする私の方法』(講談社)、
『プレスリリースはラブレター』(万来社)がある。

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