「点」から「線」へ発想の転換が決め手に
「ロゼット洗顔パスタ」の前身となる「レオン洗顔クリーム」が誕生したのは、いまから90年前の1929年。老舗企業のロゼットが抱えていた課題は、「商品の育成など、既存商品へのてこ入れが未着手であったこと」だった。「 老舗だからこそ、『第2ステージ』として現状を打開するような、斬新な企画を必要としていました」(マーケティング部商品開発課課長・奥山幸氏)
ロゼットは「ものづくり」に密接した会社。自社で研究所や工場を有している。生産現場のスタッフを通称、「洗顔ボーイズ」というほど、製品への愛情が深いのだという。「製造過程に携わる社員にもお客さまの存在をより身近に感じてもらい、仕事の励みになる企画という点が、斬新さとは別のポイントでした」(奥山氏)
これらの課題をもとに、2018年10月にコンペを実施。ロゼットが満場一致で選んだのは、TBWA\HAKUHODOと博報堂の合同チームの提案企画だった。
奥山氏は「当社が大切にしているものや継承したいもの、そして今後、さらに発展させていきたいものが、見事に盛り込まれていた」ことを勝因に挙げる。「なかでも『やられた!』と思ったのは、『90周年』よりも『1929年に生まれたこと』を発信すべきという発想の転換。“1929”は社内でも浸透している数字ですが、そこに価値があるのだと、改めてハッとさせられました」(奥山氏)
TBWA\HAKUHODOの関谷"アネーロ"拓巳氏は「今回の提案にあたり、さまざまなブランドの周年広告を見ました。なじみの薄いブランドの周年広告を見ても、正直あまりピンと来ない人のほうが多いのではないでしょうか。ロゼットのことを知らない人にアピールし、新たな顧客となっていただくためには、『90周年』と掲げるより、『1929年に誕生した老舗の洗顔ブランド』としての歴史を前面に押し出すほうが効果的だと考えました」と説明する。
また、博報堂の井上太輝氏は、「これまでの長い歴史があるにもかかわらず、『90周年』という『点』で終わらせてしまうのはもったいない。『線』としてのコミュニケーションを設計することを意識しました」と話す。90周年とうたわないことで、91年目以降の汎用性にも重視した。
同じく博報堂で、デザインを担当する市田啓幸氏は「母から子へと脈々と受け継がれてきた『ロゼット』の歴史や価値の受け皿となるように、ブランドサイトを作っていきたい」と語った。
今後はこの企画をもとに、施策の実施へとコマを進める。「全社一丸となって取り組んでいきます。この1年間がとても楽しみです」(奥山氏)
コンペでの使用スライドを公開
製品認知からの購入決定率の高さと、若年層の認知率の低さに注目。若年層への商品認知の拡大を狙い、「90周年を祝うこと」から、「1929年生まれのブランドの紹介」へと発想を転換。
日本初のクリーム状洗顔料として、「古さ」を強みに。発売時からほとんど変わらないパッケージのレトロな可愛さも、その魅力のひとつ。
「ロゼット洗顔パスタ」には、老舗ブランドに必要な「創業者の想い」と「歴史」が揃っているとし、コンセプトを「日本の老舗洗顔ブランド」に。
母から娘へ、娘から孫へと受け継がれる「肌」と母の想いを「ロゼット」の歴史に重ね合わせ、メインコピーに落とし込んだ。
「ロゼット洗顔パスタ」って?
「肌の悩みを解決したい」という創業者の想いから1929年に開発された、日本初のクリーム状洗顔料。「パスタ」とは「粉を練りこみ、ペースト状にしたもの」を意味する。
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