常に立ち返ることができる、ブランドの本質を理解する
「熱狂を生み出すため」という、このディスカッションの課題についての総括として、ブランド論の研究者である、カプフェレ教授のフレームワークを遠藤氏が自身の考えも加えてカスタマイズした定義を提示。その定義は以下の通りだ。
1.「絶対的」。真に熱狂を生むブランドはブランド側に強い意志があり、競合他社との比較に基づく、ポジショニングなどの戦略の延長にはない。
2.「情緒と感性」。機能だけでなく快楽的だったり、情緒的な価値を内包している。
3.「特定性」。万人に受けるものではなく、一部の人しか理解できない。排他的とも言える要素がある。
4.「神秘性」。近づきがたい、神秘性がある。
5.「限定性」。誰もがアクセス可能ではなく、手に入れづらさがある。
遠藤氏は「これはラグジュアリーブランドのフレームワークで、下の項目に行くほど、その要件を満たす」と説明した。
この定義について、加藤氏からは「ラグジュアリーブランド以外でも、ファンの熱狂を考える上で応用できるか?」との問いかけがなされた。これに対して鈴木氏は、「①絶対的」という部分について特に共感できる点がある、と回答。「例えば、シューズの『ニューバランス990』を発売した際、当時のシューズの相場価格を度外視した100ドルの価格で販売。こだわりを重視したからこそ、あえてその価格で世に出したわけだが、ここにニューバランスならではの本質がある。そのブランドらしさ、authenticityを理解し、常に何かあった際に立ち返ることがマーケティングにおいて重要」と続けた。
最後に加藤氏は、「自分たちのブランドのコアは何か。それをマーケター自身が理解できてこそ、ファンの熱狂も生み出せるのではないか」と総括した。
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