日本人にとっての「いい生き方」とは何か?
石川:そうです。理性を落とす、酒を飲むというのはいいことだと僕は信じています(笑)。
権八:酒飲むと、文章を書きたくなっちゃって、抑えられなくなるんですよ。
石川:ポエム的な?
権八:いえ、ポエムじゃないです。エッセイのような。
石川:だから湧いてくるんだと思うんです。どんどん。
権八:でも朝読むと恥ずかしかったり、下ネタ書いてたり。八海山飲みすぎて興奮してFacebookでガーッと書いて、翌日慌てて消して。でも興奮状態というか、湧いてきちゃうんですかね。
石川:だから翌朝精査したほうがいいですよね。理性で。
権八:まとめると、よりよく生きるためには、だしでうがいするのと、寝ると。石川さんが書いていたことでポジティブすぎてもよくないというのがありましたよね? ポジティブシンキングっていいと思うじゃないですか。
石川:そうそう。ポジティブすぎる人は慎重さに欠けるんですよ。「大丈夫、大丈夫」と言ってる人は、だいたい大丈夫じゃないんです。
一同:(笑)
権八:ポジティブバカ。
石川:酒飲みすぎたり、交通事故に遭ったり。ポジティブすぎてもよくないですね。
権八:どうしたらいいですかね、幸せになるには。
石川:難しいんですよ。個別性も高いですから。最終的にはみんな違ってみんないいとしかならないんですけど、共通項を見つけるのが僕ら研究者の仕事ですから。最後、日本人にとっていい生き方とは何ぞやということについて、最新の研究結果をお話しましょうか。
中村:おー、ありがとうございます。ぜひ。
石川:僕がこの数年、練りに練った研究結果なんですけど、まず日本人にとってのいい生き方を研究するうえで、何を題材にしたらいいかということなんですよ。たとえば僕が取り組んだのは、「まんが日本昔ばなし」なんですね。
中村:「ぼうや~♪」の。
石川:そう。日本の昔話は世界の昔話と比べて特殊すぎる構造をしてるんです。どういうことかというと、西洋の物語は弱い主人公が最後に結婚なり、富をつかんで、めでたしめでたしと終わることが多いんです。基本的には右肩上がりなんですね。
権八:なるほど。
石川:でも、浦島太郎を思い出してください。竜宮城に行きますよね。ここで西洋の子達は「いつドラゴンが出てくるんだ」、「いつドラゴン倒して、姫を助けるんだ」となるんですけど、竜宮城なのにドラゴン全然出てこないじゃないですか。
権八:確かに。
石川:結局助けもせず、玉手箱をもらって、帰って開けたら歳を取りましたと。もうちょっと一般化して言うと、日本の物語ははじまりと終わりで変化があまりないんですね。一言でいうと、おじいさんとおばあさんがいましたと。途中いろいろあって、おじいさんとおばあさんがいましたね、という。
一同:(笑)
権八:最終的に、やっぱりおじいさんとおばあさんいましたと。