コミュニケーションアイテムの 見直しの一環でリニューアル
白い紙の上に、赤、黄、緑の手描きの線が途切れることなく広がっていく。伊勢丹の新しい包装紙は、伊勢丹のショッピングバッグのタータンから3つの色を取ってデザインされた。多角形の輪郭線をモチーフにデザインされた線は1本1本色鉛筆で引かれ、直線の中にも温かみが感じられる。線に囲まれた空間には「I・S・E・T・A・N」の6文字がさりげなく配置され、見る人に発見の楽しさを与えてくれる。
このリニューアルの経緯を、三越伊勢丹 MD戦略部 髙橋元さんは「ここ数年、三越、 伊勢丹共にそれぞれのお客さまとの大切な接点である包装に関わるアイテムの見直しや整理を進めてきました。2013年に伊勢丹のタータンをリニューアルし、2014年には三越のショッピングバッグのデザインを新たにしてきた流れの中で、伊勢丹の包装紙も見直すことになったのです」と説明する。
「我々が包装紙で包むのは『品物だけではなく贈る方が相手の方を想う気持ち』」 と髙橋さんは言う。また、包装紙でラッピングしてもらうために百貨店を利用する人もいるほど、包装紙はお客さまにとっても 大切なアイテムだ。
その重要なリニューアルを進める上でパートナーとなり、ワイズベッカーさんへの依頼を提案したのが、グラフィックデザイナーの岡本健さんだ。岡本さんは2016年に三越伊勢丹グループの「のし紙と掛け紙」 のリニューアルを担当するなどたびたび同社の仕事に携わっている。「ワイズベッカーさんの作品には、ていねいに生きようとする姿勢や、人に喜びを与えたい気持ちなど、そのライフスタイルや人柄が体現されています。だから百貨店のギフトと親和性が高いと思ったんです」とその理由を話す。
タータンとの相性を重視したデザインを求めた
ワイズベッカーさんにアートワークを依頼する際には、「タータンとのコーディネイトを考えてほしい」と要望を伝えたという。「この包装紙で包まれたギフトは、タータンのショッピングバッグから取り出され ます。私たちはショッピングバッグも包装紙もお客さまのファッションの一部であってほしいと考えています。そのため、このショッピングバッグと包装紙についてもファッションとしてのコーディネイトが重要でした」(髙橋さん)。
こうして完成した新しい包装紙は、タータンとの相性がいいただけでなく、文字の配置などにワイズベッカーさん独自の遊び心も加わったものになった。新しいデザインを発表された直後は、さまざまな反応が届き、包装紙を大切に感じてくれているお客さまがとても多いことに改めて気づいたと髙橋さん。岡本さんは、「いまの時代でも贈り物を包むという文化への関心が高いことがわかり、嬉しくもありました」と話す。
伊勢丹ではこの包装紙の特設 Webサイトやムービーも制作するなど、社内外に向けて新デザインの理解を深めてもらう情発信にも力を入れている。タータンと共に愛される新たな伊勢丹の顔のひとつとして大切に育てていきたいと考えている。
スタッフリスト
- 制作
- 岡本健デザイン事務所
- AD+D
- 岡本健
- D
- 山中桃子
- アーティスト
- フィリップ・ワイズベッカー
- C
- 角尾舞
- 映像
- 岡崎智弘
- 音楽
- 岡篤郎、穴水康祐
- Webコーディング
- スタジオ・ユニ