【データがつなげるカスタマージャーニー Vol.1】「ユーザーに寄り添う、コミュニケーションで満足度向上 オズモールの「Oracle Service Cloud」活用事例」はこちら
データがつなげるカスタマージャーニー Vol.2
【対談者】
オークハウス 取締役 営業本部 本部長 横山雄一氏
日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 事業開発本部 ビジネス企画・推進部
CX CLOUD マネジャー 中里美奈子氏
シェアハウス黎明期から事業を展開 92カ国から入居者が集まる
中里:オークハウスさんは、いつごろからシェアハウス事業を手がけてこられたのでしょうか。
横山:1992年の創業以来、シェアハウスを中心に賃貸サービス事業を提供しています。一般的な賃貸住宅ではなく、各種サービスを付加価値として提供しているという意味で、あえて賃貸「サービス」という言葉を使っています。
現在は東京、神奈川、埼玉、千葉と京都、兵庫に260カ所、6500室の賃貸住宅を展開。従業員も100人以上と、シェアハウスを専業で行う企業としては世界でも有数の規模となっています。
私たちがビジネスを成長させることができた理由のひとつは、物件の仕入れから、企画、募集、集客、入居者・物件の管理までを自社で一貫して行う、「内製」にこだわっているところにあります。外部の協力会社のサービスや能力に過度に依存していないので、経営や事業が外的要因による影響を受けにくいという利点があります。
中里:「シェアハウス」という言葉が一般的ではなかった時代に、すでにビジネスチャンスを見いだしていたのは、すごいですね。
横山:創業者で現会長の山中武志は、京都大学を経て日本IBMに入社し、30歳を目前に独立してソフトウェアの会社を立ち上げました。しかし、残念ながら倒産させてしまう事になり、当時所有していた不動産ビルを、友人のアドバイスの下、部屋を借りるのに困っていた外国人に一部貸し出したところ、非常に好評だったそうです。そこから20年間、事業を拡大させてきましてから、まさにドン底からの復活ですね。
当社の事業は、こうした経験がルーツになっています。
前述の通り、当時は外国人が部屋を借りることも難しい時代でした。日本の賃貸住宅は、いわば「鎖国」のような状態だったのです。物件のオーナーが敬遠することも一因ですし、連帯保証人、敷金・礼金などの商習慣もハードルです。ちゃんとした企業に勤めていても、学校に通っていても、外国人という理由だけで借りられないケースがありました。
「シェアハウス」という言葉が言われるようになったのは2000年くらいからで、創業したころはゲストハウスと呼ばれていましたが、このような背景もあってシェアハウスのニーズは実感していたのです。とは言え、ビジネスとしての認知度は低かったので、私も親に自分の会社の事業を説明するのに苦労しました。
中里:それでは入居者の方は外国人がやはり多いのでしょうか。
横山:私が入社した頃は外国人の利用者の比率が高く、9割が外国の方でした。今では外国人利用者は全体の52%ほどで、出身国は述べ92カ国になっています。
2000年頃はバックパッカーとして長期間海外で旅を楽しむ日本人も増え、滞在先としていわゆるゲストハウス(長期間安く滞在出来る宿泊施設)を利用していました。こうした施設は宿泊者同士が交流し、現地の情報交換も行われるコミュニティ的な役割も持っています。現地でゲストハウスを経験したバックパッカーが、帰国しても同じような環境を求めたり、習得した英語を日常的に使う環境を探したりすることで私たちを知るようになってきたため、日本人の当社サービスの利用者も増えてきました。
特にリーマンショック後の米国で「シェア」文化が見直され、現在のシェアリングエコノミーの礎となるような協働をテーマにした本も多く刊行され、シェアというキーワードが広く使われるようになったのもこの時期です。またテレビなどのメディアでも「シェアハウス」という言葉が頻繁に使われるようになり、シェアハウス自体の認知度が高まったことも大きな要因です。
よく「どのような人が入居しているのか」と聞かれることもありますが、みなさん本当に普通に働き、学んでいる方ばかりです。オークハウスでは「連帯保証人なし、敷金なし、休職中でも賃貸可能」としているので、家賃の未納も多いのではという質問もたくさんありますが、実際の未収率は0.1%未満です。
一般の賃貸住宅でも、保証会社が入るので未収はほぼゼロになっていると思いますが、私たちのような形でこの数字はかなり低いと考えています。その理由は管理体制にあります。通常の賃貸物件では、一度契約すると不動産会社の担当者や仲介業者、オーナーにも会うことはほとんどありません。一方、私たちは契約後においても入居者とのコミュニケーションを大切にしています。
これはシェアハウスだからこそという理由もあります。共用スペースがあるので、お皿を洗わない、親しくなって喧嘩をする、そういう小さな問題も起こります。そこで、だいたい200人にひとりくらいの割合で営業担当を置いて、日常的なコミュニケーションを取るようにしています。日々、顔を合わせて、関係性を深めると家賃を滞納することに罪悪感が生まれる。そういう心理になると未収のリスクも減らすことができます。
私たちが顧客を信頼すれば、顧客も私たちを信頼し返してくれる。この相乗効果がうまく回っている。これは我々独自のノウハウで、簡単に真似ができるものではないと思っています。
中里:外国人が大半だった頃に比べて日本人の比率も上がった今では、マーケティング活動も変化しているのではないでしょうか。
横山:創業時、オークハウスを知ってもらう方法は、外国人向けのフリーペーパーへの出稿が主流でした。その後、インターネットの利用が拡大し、SEOやSEMなどオンラインマーケティングの重要性に気づき、会社として大きく投資をすることになりました。そのタイミングで私は営業担当からマーケティング担当へ移り、今に至っています。
当初すごくニッチなマーケットで「シェアハウス」という言葉を押さえて、キーワードを押さえて、SEOやSEMを中心にしたマーケティングで十分でしたが、「シェアハウス」の認知が高まり、競合も増え、私たちのビジネスを次のステップへと進めようと考えたときに、従来のマーケティング活動だけでは足りない部分が出てきました。
入居率自体は92%くらいの高い状態はキープできています。ただ、そこから入居率を1%、2%と上げようとするときの手法がなかったのです。どうすればマーケティングにブレイクスルーを起こし、新規顧客を獲得できるのか。これは数年当社で課題になっていたことです。