逆襲するテレビ〜視聴率は世帯から個人へ、量から質へ

広告費でネットに抜かれても、テレビだからこその価値を示せるか!?

では、テレビ局側はどうなのでしょう?実は前回のこの連載で書いた「「ひたすら量」から「先に質、次に量」へ。広告の指標が変わろうとしている。」は、そのことだったのです。2月の2つのフォーラムでこんなことが議論されるとはまさか思ってなかったのですが、間違いなく対応した話です。

つまり日本テレビが社内指標を世帯視聴率から個人視聴率に変えたのは、この流れへの対応なのだと思います。まあスポットの取引が個人視聴率で行われているのだから当たり前でしょうけど。

気になるのは他の局です。一部の局では議論を進め、その局なりの社内指標を設定するらしい。社内指標は、その局が何を大事にするかの姿勢を共有するものです。前はどの局も世帯視聴率でしたが、これからはひょっとすると局によって違ってくるのかもしれません。

私はこれはとてもよいことだと思います。局によって尺度が違った方が、多様な番組が出てくるでしょうから。今は局による差異が際立っていません。同じように同じ話題を同じような演出で同じ出演者で放送している。見る気が失せますよ。

それに局によって指標が違うなら、「〇〇〇〇、X%で好スタート!」とか「△△△△、10%割れ!」とかのどうでもいい記事を見なくてすみます。ある意味、滑稽ですよね。放送する側はもう世帯視聴率を気にしてないかもしれないのに、その数字しか知らないから騒いでPVを稼ごうとするなんて。そういう記事しか書けないメディアは、これから世帯視聴率の存在意義が薄まるのに連れて、見かけなくなってしまうかもしれませんけどね。

テレビはもう、新しいパラダイムにシフトしています。取り巻く側も、それに気づくべき時です。

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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