抽象化したものは応用が可能
私が最近試みた取り組みとして、ブログサービス「note」の30日連続更新というものがあります。30日分の記事の中には、多くの人に拡散されて読まれた記事もあれば、思ったよりも反応のない記事もありました。
私はここから、多くの人に拡散され、読まれる記事というものを抽象化しようと考えたのです。つまり「バズの抽象化」です。
実際に行ってみて分かったことがあります。私が「これはよく書けた!」という記事ほど反応が薄く、「まぁまぁかな」と思った記事が拡散されるのです。それらの記事にはどのような本質がかくされているのでしょうか。考察してみると、「これはよく書けた!」という記事は「新しい視点の提案」であることが多く、そういった記事はあまり拡散されません。
例えば、「お金持ちになるほどさまざまなことが均質化する」という視点を提案した記事があります。収入が増えるにつれて、趣味や車、身にまとう服装が同じようなものになっていく。ブランドの商品ラインアップだって、ファストファッションのほうが、ラインナップが多く、ハイブランドは少ない。
これはあまり拡散されませんでした。対して、拡散された記事というのは、次のようなものです。
私は最近転職したのですが、その際にこれまでお付き合いがあった営業の方がたくさん連絡をくれました。その連絡の内容は大きく3つに分かれます。①後任を紹介してください②次も一緒にお仕事しましょう③とりあえず飲みに行こう、この3つです。不思議とこれらのメッセージをくれた方には共通項があり、①より③の方が立場の上な人が多かったのです。さらに、純粋に③の方がうれしい。いまだに仕事上でもお付き合いがあるのは自然と③の人が多いのです。
このような内容です。これらのバズった記事の本質を抜き出し抽象化すると、「ストーリー→共感→過去の追体験→学び」というものに当てはまるものが拡散されていることがわかりました。話に物語性があり、読者の共感ポイント・同じような過去の経験を想起させ、活用できる学びがある、というものです。
このベースに当てはまるように記事の内容を考えれば、次もバズる記事を書くことができます。これが抽象化のすごいところです。一度抽象化したものは、それをさまざまなことに応用することが可能なのです。
この力は意識することで、筋肉のように徐々に鍛えられていきます。様々な具象から共通する本質を抜き出す、ぜひ日々の生活の中で意識してみてください。
井上大輔(いのうえ・だいすけ)
ヤフー メディアカンパニー
マーケティングソリューションズ統括本部 エヴァンジェリスト
ニュージーランド航空にてオンラインセールス部長、ユニリーバにてeコマース&デジタルマーケティングマネージャー、アウディジャパンにてメディア&クリエイティブマネージャーを経て2019年2月より現職。Advertimesにて「マーケティングを別名保存する」、週刊東洋経済にて「マーケティング神話の崩壊」執筆中。NewsPicksアカデミア プロフェッサー。著書に『デジタルマーケティングの実務ガイド』(宣伝会議)
『たとえる力で人生は変わる』 井上大輔著
「たとえる力」があれば、様々な事柄の大事な部分を抽象化し、状況などを身近なものに置き換えて理解を促すことで、共通の知識がなくても、円滑な相互理解が可能になります。本書では5つのステップと練習問題で、誰もが「たとえる力」を伸ばすことのできるメソッドを紹介します。
『たとえる力で人生は変わる』対談バックナンバー
共感のヒント~「言語化」の先にある「たとえ」 【りょかち×井上大輔】 前編
共感のヒント~抽象化し相手を理解したうえで表現する、伝え方の新しいフレームワーク【りょかち×井上大輔】 後編
「面白い」を決めるは誰?【芸人・五明拓弥 × マーケター・井上大輔 対談】前編
「気づいてもらう」ために、議論をまき起こす 【芸人・五明拓弥 × マーケター・井上大輔 対談】後編