データを蓄積し、分析することで次の施策につなげたい
中里:実際に利用されてみて、次の施策へとつなげられそうな手ごたえはありますか。
久保:公開して間もないので明確なデータとしてはまだ持っていない状態です。ただ、政府観光局(JNTO)でも訪日観光客に対する調査を行っていて、旅行先を決めるきっかけに「動画」と回答する方が一定数いるとの結果があがっています。これは私たちがプロモーションのフォーマットに動画を選んだ理由でもありますが、動画をつくって見てもらうだけでなく、その先にいる見た人のことをもっと知りたいと考えています。
具体的には動画を見た人が何かアクションを起こしているのではないかという仮説を立て、ソーシャルクラウドで行動を観察しています。今はそのデータを収集し、効果検証の準備をしている段階です。もちろん、仮説が間違っているかもしれないということも想定しています。データがあればいろいろな角度から分析が可能ですし、そこから新たなユーザー像を導き出し、施策につなげることができると考えています。
七尾:今はどんなキーワードをピックアップしているのですか。
久保:ひとつが「自転車」というキーワードです。昨年の10月に、2年に一度開催する「サイクリングしまなみ」という、普段自転車では走ることができない高速道路などを使ったイベントがあったのですが、それを受けてソーシャルの場でどのような反応をしているのかを見ていました。
年間を通じて見ると、私たちがイベントの告知など、何かアクションをすると反応が上がっています。エントリーの開始や締め切り時期の近く、もちろんイベント開催中にも反応があります。また、昨年でいうと豪雨による災害に見舞われた時には、復興を支援するメッセージが寄せられるということもありました。
これまで効果検証というと、貨幣評価額で経済効果を見ることが多かったのですが、今後はソーシャルでの反応やそれによって起こるパーセプションチェンジも指標になっていくと考えています。
ひとつの成功体験が組織の意識を変えていく
中里:県庁の業務全体にデジタルマーケティングの効果を波及することを期待されているということですが、昨年4月に発足し、12月に動画を公開したことで庁内のチームを見る目や対応に変化はありましたか。
廣井:一番変わったのは、12月に動画を配信し、約1週間で1000万回再生されたときだと思います。最初は、デジタルマーケティングといってもよくわからないし、何ができるのだろうという感じだったと思います。そこに1000万人という、具体的な数字が結果として表れたことは大きかったです。
池田:4月に室を立ち上げたときは、私たちも何ができるのだろうと思っていました。そこから手探りで、インバウンドというテーマにたどり着き、予算化して動画を公開するところまできた。その動画が1週間で1000万回再生、さらに伸びて再生回数は今や2000万回という結果が見えたときに、庁内でも「何かができる」という可能性に気づき、自分たちの事業にデジタル活用することで何ができるのかを考える意識が生まれつつあるように感じています。
森:今回「ガストロノミー」「お遍路」など、4つのテーマで動画を制作していますが、国によってテーマへの反応が違うこともわかりました。従来のチラシなどでは、配った後の反応はわからない。デジタルマーケティングを使えば、誰が、何秒間見たのか、どのタイミングで離脱したのか、そうした情報を取得できるということもひとつの発見でした。
中里:ひとりのユーザーが旅行をするにしても、旅行前、旅行中、旅行後と、フェーズによって様々なタッチポイントが考えられます。デジタルマーケティングを取り入れると、その全てのタイミングでユーザーの状況に合わせたプロモーション施策を打つことが可能です。
久保:まだ始まったばかりの事業なので、今はカスタマージャーニーの入り口である認知の段階です。今後、施策を進めていくなかでより細かい部分への活用も見えていくと考えています。
インバウンド以外にも県政にデジタルは生かせる
廣井:私たちの目標はインバウンドだけではありません。県の事業にはほかにもデジタルマーケティングを使えば効果がありそうな分野はたくさんあります。今回の動画プロモーションをひとつのモデルとして、今年度末に「デジタルマーケティング基本戦略」を策定し、そのノウハウを県庁内で共有する予定です。
森:ほかの自治体でも、情報発信にデジタルマーケティングの手法を利用しているところはあると思います。ただ、その利用法は観光や広報といった事業内の担当者が進めていることが多いのではないでしょうか。本県で取り組むデジタルマーケティングの活用は、特定の部署だけではなく、県全体で推進していくものです。そのために存在するのが私たちだと考えています。
七尾:プロモーション推進室の皆さんは非常にデジタルリテラシーが高く、基本的な機能については簡単な説明で操作を理解していただきました。
「クラウド」と聞いただけで敬遠する自治体の方も多いのですが、皆さんからは本当にデジタルを受け入れて、活用していこうという気概を感じました。今回は外部のデータを分析するにあたり、県庁のシステムにアクセスしないクラウドが向いていたこともあり、比較的スムーズに導入いただいたと思います。
また、オラクルはクラウドベンダーですが、こうした新しい領域でその機能を利用して、どんなデータを集めて、分析するのかという取り組みには、新しいパートナーが必要だと考えています。今回はそこにXPJPさまがいて、県の方と一緒に戦略を考えていただけた。三者がうまく関わり合えたところが良かったと感じています。
久保:全体的なイメージはなんとなく持てているので、それを県庁の細かい事業に対してどう活用できるのかは発想の世界だと思います。メジャメントについても、メッセージの量だけではなく、定性分析の方が良いのか、それぞれの事業に応じて決めていく必要があります。そうしたこともひとつひとつ相談しながら、トライしていく感じです。
七尾:愛媛県の取り組みのすごさは、4月に組織を立ち上げ、9月の補正予算から10月に事業をスタートし、12月にはコンテンツを公開し、すぐに1000万再生というスピード感です。これがデジタルの強みですし、クラウドサービスがそれを支えた。このような例はなかなか無いと思います。
中里:これまで、広告や動画をつくることがゴールだったところから、プロモーション推進室が誕生したことでスタートに変わった。仕事の進め方も変わりそうですね。
池田:そうした認識を持ってもらいたいという思いで私たちは活動しています。ただ、語るだけではいけないと思っていて、成功事例を実際に見せることが重要だと考えています。
森:「KKD」という言葉があって、これまでは「勘(KAN)、経験(KEIKEN)、度胸(DOKYO)」で進めてきました。今も基本的にはそうかもしれません。しかし今後は、「仮説(KASETSU)、検証(KENSYO)、データ分析(DATA BUNSEKI)」でプロモーション、情報発信、マーケティングの高度化をしていかなければいけない。そういう時代だと思っています。私たちの事業を通じて県庁の意識変革にも貢献していければと考えています。
自治体同士、デジタル活用のアイデア交換をしたい
中里:愛媛県のような取り組みを、全国の自治体へ展開してくために、私たちができるサポートはどんなことでしょうか。
七尾:私も官公庁を長く担当していますが、一度はじめると当初決めたやり方のを変えずに必ず成功させなければいけないとなりがちかと思います。そこが、デジタルマーケティングのように状況に合わせて柔軟にやり方を変えていくような取り組みに対して躊躇のポイントになりやすい。一方で、愛媛県庁様のように、トップがデジタルを学び、トップダウンで検討が始まる、というケースは増えています。
こうしたなかで、「導入した方がいい」「メリットがあります」というツールの提案だけではなく、導入したお客さまの苦労や実例を合わせて伝えていきたいと思っています。愛媛県のように組織を立ち上げた例、観光や建設、町おこしと多くの事業があるなかでどこがリードするのか、担当部署はどこなのか、予算は誰が?など、そうした問題にどう向き合ったのか、可能な範囲で共有できればと考えています。必要があれば直接情報交換するような機会を設けるなど、お客さま同士のつながりが生まれればより利用が広がるのではないでしょうか。
池田:私たちも最初は、いろいろな方のアドバイスをもらいました。もし、今後、私たちに話を聞きたいという自治体や組織の方がいれば、ぜひ一緒に何かできればと思います。情報共有することで、私たちも足りない部分に気づくこともあるでしょうし、お互いに刺激しあうことができればより良い施策も生まれると思います。
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