危機から復活を遂げようとするBEST BUYのトランスフォーメーション戦略
Adobe以外のデジタルトランスフォーメーションのジャーニーも紹介された。家電販売のBEST BUYだ。キーノートにはBEST BUYのCEOであるHubert Joly氏が登壇した。
「我々は7年前、経営的に非常に厳しい状況に追い込まれた。どうしたらEコマース企業とは違う、競争力を生み出せるだろうか。そう考え、ショッピングジャーニーを見直し、カスタマーエクスペリエンスの向上に投資をする決断をした」(Hubert Joly氏)。
BEST BUYでは従来のビジネスである家電の販売においても、Eコマース企業に負けないサービスを開発したというが、カスタマーエクスペリエンスを基点にした、新たなサービス開発にも注力。具体的にはテクノロジーに不慣れな顧客のために、自宅を訪問し、無料で製品選びのサポートをしたり、年間200ドルで、家庭内にある複数のブランドの製品のサポートをするサービスを提供したり、高齢者世帯用に万一、異変が発生した場合のモニタリングができるデバイスを提供するなどの取り組みをしている。
Hubert Joly氏は「自分たちについて“家電を売る会社”ではなく、“テクノロジーをもって、お客さまの人生を豊かにする”という目的を実現する会社であると再定義したことが、トランスフォーメーションを実現させた背景にある」と話した。
また「データがなければ、トランスフォーメーションは実現できなかった」とも言い、「実店舗から始まった会社ではあるが、カスタマージャーニーのデジタル化は無視できない。しかし、実店舗とそこで働く従業員は私たちにとって大きな資産である。実店舗は今も重要な顧客接点であり、リアルとデジタルを横断したカスタマージャーニーの理解、さらに顧客に対するコミュニケーションが必要だ」と説明した。
Hubert Joly氏の話を受け、Shantanu Narayen氏は「カスタマーは商品・サービスの機能ではなく、エクスペリエンスに対価を支払うようになっている。このカスタマーの変化に対応し、デジタルトランスフォーメーションを実現しようと考える企業を阻むのが、社内にあるレガシーのシステムだ。デジタルの戦略を中心に据えたうえで、組織の機能や体制も改革する必要がある」と話した。