米国大手フィットネスチェーンは、いかにしてデジタルトランスフォーメーションを実現したのか? — Adobe Summit2019

米国ラスベガスにて2019年3月26日~28日(現地時間)の期間、開催された「Adobe Summit2019」。マーケティング、デジタルエクスペリエンスをテーマに世界中からマーケターやデジタル担当が集まる本イベントを現地からレポートする。

多種多様な業界において、デジタルトランスフォーメーションが求められている。フィットネス業界も、そのひとつだ。

「Adobe Summit」ではキーノート以外にも多様なブレイクアウトセッションが開催されているが、その中のひとつにアメリカの大手フィットネスチェーン24 Hour Fitnessのマーケティング担当のVice Presidentが自社のデジタルトランスフォーメーションの取り組みを紹介するセッション、「24 Hour Fitness, Microsoft Dynamics 365, & Adobe Campaign」があった。

登壇したのはMike Carney氏(Vice President of Marketing, 24 Hour Fitness)。「24 Hour Fitness」は400万人以上の会員、約2万3千人以上の従業員、400を超えるフィットネススタジオを抱え、年間10億ドルの収益を上げている。

そんな24 Hour Fitnessが個々の会員とパーソナルなコミュニケーション、感情を伴う関係性の構築を目指し始めたのは2016年頃だったという。
「私たちが、会員に対するパーソナライゼーションを目指して変革を始めたのは2016年頃。この頃から、フィットネス市場には破壊的なイノベーションが起きていました。アプリを使ったヘルスケアサービスなど、これまでになかった新しい競合企業が生まれていたのです。現在、フィットネスの市場は供給過多の状況と言えます」。

これまで、24時間利用できる利便性という機能を訴求してきた24 Hour Fitnessだが、一人ひとりのフィットネスジャーニーを捉えたパーソナライズしたコミュニケーションを図ることで、会員と感情的な結びつきをつくる戦略へと方針を転換した。

当時、会員のなかでパーソナルトレーナーによるトレーニングを利用していた人の割合が約3%、スタジオのクラスに参加をしている人の割合が17%で、残りの8割の会員とはパーソナルなコミュニケーションの機会を持ててはいなかった。いかにして一人ひとりの会員と感情的な結びつきをつくれるかが、同社にとってのチャレンジとなった。

同社のデジタルを活用したパーソナライゼーションの取り組みは、「Vision&Strategy」「Data Structure」「Technology Partners」「Platform Development」「Content Production」、「Behavioral Research」「Omni-Channel Integration」「Team Member Integration」の順に進んでいったという。

24 Hour Fitnessのデジタルパーソナライゼーションの道のり。

「私たちにはマスパーソナライゼーションが必要と考えました。検討の結果、Microsoft Dynamics 365とAdobe Campaignの2つのソリューションを選びました」。

写真左、IN-CLUB CHANNELSの取り組みには主に「Microsoft Dynamics 365」が右側のPERSONAL DIGITAL CHANNELSの取り組みには「Adobe Campaign」が活用されている。

同社が、トランスフォーメーションの取り組みの中で新しく始めたことがアプリの提供だ。

フィットネスジム内でパーソナルなコミュニケーションを図るだけでなく、ジムの外においても一人ひとりの会員とパーソナルな関係性を築くため、アプリを活用している。

「現在、約400万人の会員のうち、約100万人がアプリを使っている。アプリを介して、一人ひとりの会員にパーソナライズしたトレーニングのガイダンスを行うなどしたことで、アプリの利用者はロイヤリティが高まる傾向があることを確認している」という。

同社では今後、会員内のアプリ利用率を8割程度にまで高めることを目標にしているという。ジム内に留まらず、デジタルも活用することで、会員との接点を増やし、その接点を介して、会員を理解し、パーソナライズしたコミュニケーションで感情的な結びつきをつくっていきたい考えだ。

アプリの説明をするMike Carney氏(Vice President of Marketing, 24 Hour Fitness)。
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