【前回】
「【高崎卓馬のクリエイティブ・クリニック】考え続ければ、企画はかならず面白くなる」
カラダがいい企画に反応する習慣をつくる
僕は天才ではないので、感性にまかせて面白いものをつくれる自信がまったくありません。だからこの世界でいちばんこのことについて自分が考えた、という状態まで考えつづけるしかありませんでした。結果的にそこまで考え抜くと、どこか変わったものにはなるんです。クライアントも喜ぶ、タレントも喜ぶ、僕も嬉しい、でもなんか普通じゃない。結果的に他に似ていないオリジナリティあるものが生まれる。
プロセスでいうと、まず紙に書きます。メモではなくある程度完成のイメージがつかめるものです。CMなら絵コンテです。そして他人の企画を見るように見つめて、その長所と短所を考えます。設定がうるさいなとか、コピーが弱いな、とか、印象が薄いな、とか。その次にその短所を打ち消す企画を考えます。そしてそれをまた紙にまとめる。それからその長所短所を考えて、短所を打ち消していく。
これを延々とくりかえします。若い頃はなかなか正解にたどり着けずに延々とこのループのなかにいました。でもある瞬間、いままで自分が作ってきたハードルのすべてをいっぺんに乗り越える企画が立ち現れるんです。これがかなりの快感を伴う。悩めば悩むほどそれは大きい。
この快感がとても重要なんです。このいい企画を思いついたときの身体の反応を何度も自分に覚えさせて、ひとつの尺度にしてしまえばいいのです。
逆にいうと、これがないときはまだそれほどの企画ではないと思うことにする。短い時間だけど腕に鳥肌がたつ。それは今、僕のなかのひとつの目安になっています。自分がコピーを思いついたとき、いいキャンペーンの骨格を思いついたとき、面白い取り組みを誰に相談したらいいかイメージが湧いたとき、会議で後輩がつぶやいた企画の芽が素晴らしかったとき、鳥肌がシャツのなかでたちます。
企画が思いつく瞬間を身体が覚えると、逆にその感覚をつくりにいけば企画が生まれやすくなったりもします。ここで考えるのをやめたほうがいい。今、苦しいけど全部やりきったほうがいい。あの喫茶店にいくと思いつきそうだ。ここでこんなに考えが進まないということはもっと手前で何か間違いがあるに違いない。そんな風に考えたりもしています。
僕は、脳は筋肉だと思っているので、動かしていると、可動域が広がるんですね。何を考えればいいか、を明確にしてあげて脳に覆いかぶさる得体のしれないストレスを排除してあげるとよく動くようになります。