産学連携の成果からその意義やメリットを検証
基調講演に登壇した早稲田大学商学学術院教授の恩藏直人氏は、「今日のマーケティング研究では、『産学連携』をキーワードに様々な取り組みのアウトプットが見られるようになった」と話した。
マーケティングのトップ雑誌『Journal of Marketing』の産学連携関連の論文の数を1998年から5年刻みで調査したデータによると、産学連携関連の論文数は年々増えており、2018年は年間論文掲載総数48本のうち、約半数が産学連携関連の論文であった。
また、早稲田大学が企業や行政と連携して研究成果を上げることを目的に設置した総合研究機構には、企業や独立行政法人などと共同研究に取り組むプロジェクト研究所が110以上も存在しているという。
「産学連携により、我々研究者は貴重なデータを得ることができる。我々が得意とするのは、データから事象のメカニズムを解明すること。企業の方々は、大学と連携することで様々な知見を得て事象への理解を深めることができる」と、産学連携のメリットを語った。
その後のパネルディスカッションでは、恩藏氏が取り組む「デジタル×アナログ」の活用法の産学協働研究プロジェクトのメンバーが登壇。本プロジェクトはデジタルとアナログを組み合わせたマーケティング手法を見出すことを目的に、企業のプロモーション活動を通じた実証実験を行っている。パネルディスカッションでは研究者と企業、それぞれの立場から、プロジェクトを通して感じた産学連携の意義やメリットについて意見が展開された。
富士フイルム・e戦略推進室マネージャーの一色昭典氏は「連携のおかげでインパクトのある事業貢献が得られた」と話した。同社では、「フジカラー 写真年賀状」のプロモーションで実証実験を実施。DMとEメールの組み合わせや送付順を分析し、その結果をDM施策に反映させた。すると売上が2,000万円アップしたという。一色氏はアナログの重要性や有用性を研究チームから聞き、ビジネスに生かしていると話した。
恩藏氏は「今後は、同じ情報でも受け取り方が紙かデジタルかによって、記憶の効果や理解の効果、好感度がどのように異なるのかも研究を続けていきたい」と意欲を見せた。
そこで恩藏氏は、アメリカのビジネススクールが図書館を電子化しようとした時に、全教員が反対したが誰ひとり明確な反対理由を述べられなかったというエピソードを紹介した。最後に、次のように話して報告会を締めくくった。
「このようにデジタルかアナログかを議論する時、『感覚』が大きな鍵を握ると思われる。企業の中でその道のベテランと言われる人物の中には、感覚的に正しい解を見出す能力を持つ人がいる。そうした方々の知見と我々の理論を組み合わせれば、産業界にとっても、研究者にとっても、大きな成果が得られるだろう。こうした意義を理解していただき、ぜひ積極的に産学連携に取り組んでいただきたい」。
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日本郵便「デジタル×アナログ」プロジェクト事務局
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