客観視とマインドセットで“当たり前”を共感ストーリーに変える②

【前回】「客観視とマインドセットで“当たり前”を共感ストーリーに変える①」はこちら

グローバル展開やデジタル化を踏まえた、これからの日本発ブランドはどうあるべきか—。そんなテーマを掲げ、様々な視点からブランドを語った1年間の本誌連載、またその集大成として2月25日開催したセミナーを踏まえ、土屋鞄製造所の土屋成範社長と、フラクタ社長で土屋鞄製造所の取締役も務める河野貴伸氏に改めて聞いた。

2月25日に開かれたセミナー。

表層的なテクニックは陳腐化するのも早い

河野:2月の対談で登壇者の皆さんに感じた共通点が、良い商品をお持ちで、その商品を愛しておられるということでした。福光屋は経営者の目線から、逆にBAKEは現場から経営者層や全社を動かすアプローチ、伊藤園は若干特殊なアプローチで(笑)、ブランディングの起点はいろいろなところにあって、最終的には点と点とがつながってムーブメントになるのだと学びました。

また、昨今のブランディングやマーケティングはテクニックに走り過ぎる傾向が見られますが、皆さんは本質を大切にしておられました。商売の原点をおざなりにして表層をつくろっても、世界で勝てるブランドにはなれません。

土屋:そうですよね。そもそもテクニカルな部分は陳腐化するのが早いですし、いまのように変化が激しい時代においては、なおさらのこと。その点、良い商品があり、何かのきっかけで買い、使った人の満足感がリピートや口コミにつながるという本質的なパターンは、どんな時代でも大差ありません。電話やファクスがメールに代わるとか、徒歩で買いに行ったのが車や飛行機になり、クリックひとつで終わるとか、やり方が発展しているだけのことです。

河野:たとえ一時的にブランディングに成功したと思っても、悪いものが売れるわけではないという真実は重要です。本質を忘れて、費用対効果の良いやり方にバーッと群がると……。

土屋:あっという間に陳腐化して、気づけば固定費が重荷になり、いきなり倒産という話もたくさん聞いています。

河野:日本の歴史ある中小企業が、良い商品を持ちながら消失していくのは、もったいない。単なる企業倒産というだけでなく、日本のブランドエクイティの危機だと言っても過言ではありません。

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