なるほど、それはそうだけど
実際にできるんですか?
3億円あげると言われて断る人はおそらくいないが、かと言って全員に配ることは不可能だ。「たしかに本音を突いていて人が動くだろう」と思えたとしても、実現できないのであれば、その企画は無用の長物だ。
「つまり、企画に実現可能性は欠かせません。なので面白いアイデアを世に送り出す人ほど、それを叶えるための各種の知識を日々蓄えているものなのです」(嶋氏)
「東急池上線フリー乗車DAY」でも、無料にするには法律上の制限や他路線とのかね合いなど、クリアすべきハードルはいくつもあった。
「そしていくらかかることになるのか、という計算ですよね。広告を出す費用と、無料にするコストをてんびんにかけて、正味どちらが安いか、投資効率がいいか、という。それを見せて、提案先の東急電鉄の方々も、不可能な仕事ではないし、挑戦してみましょう、と言ってもらえたのではないかと思います」(尾上氏)
対談の最後に嶋氏は「いい企画は、みんなが見た瞬間に『いけそう』とわかる企画です。言葉を重ねてあれこれ説明するより、本当に動きそうというリアリティと実現可能性に気をつけて、応募者の皆さんの得意技で攻め、その手があったか! と思わせてください」とエール。
尾上氏も「どんな手を使ってもいいというのは、一方で言い訳ができないので怖い面もあります。『販促コンペ』を利用して、自分の経験を総動員したうえでおもしろいと感じられることを探り当てる経験をしてほしいと思います」と語った。
嶋 浩一郎(審査員長)
博報堂ケトル 代表取締役社長・共同CEO
1968年東京都生まれ。1993年博報堂入社。CC局で企業のPR活動に携わる。01年朝日新聞社に出向。「SEVEN」編集ディレクター。02~04年に博報堂『広告』編集長。04年「本屋大賞」立ち上げに参画。06年「博報堂ケトル」を設立。『ケトル』の編集長などメディアコンテンツ制作にも積極的に関わる。2012年内沼晋太郎と本屋B&Bを開業。
尾上 永晃
電通 プランナー
東京理科大建築大学院卒。2009年電通入社。とにかく商品が好まれて売れるような仕掛けばかり考えている。ACCグランプリ、TCC新人賞やカンヌ、メ芸など受賞。海外賞審査員なども。毎日8時間寝ている。