『実験思考』の実験
光本勇介:「何かするにしてもリスクを考えてしまうけど、人生実験なのだから、いろいろなことが学べるし成長できるし、チャレンジしたほうが楽しい!」という内容の本です。これまで10年にわたり、会社をつくってきた経緯を書いています。
この本でユニークな部分が、価格。本を書くことには興味がなかったので、箕輪さんから声をかけていただいた際に、「僕が好きなように売らせていただけるのならいいですよ」と言ったんです。
箕輪厚介:光本さんの話を聞いたとき、この人、書籍の中身にはあまり興味なくて、売り方に興味あるんだなって思いました。でも、話を進めていく中でうやむやに流せるかなと思ってたんですけど、売る段階になると、そこまで斬新なことをやるのかって。会社で話を通すことを考えて憂鬱になった(笑)。
光本:書籍自体を電子版は0円、紙の本は印刷原価390円(税抜)で売って、好きな価格をお支払いくださいと本の最後にQRコードをつけています。ビジネス書は一般的に1500円くらいだけど、それで売るよりも、これで儲かるなら、これまでの出版業界の方法が正解じゃないかもしれないと思ったんですよ。
本のビジネスは、素人の僕が見てもあまり変わっていない。違う方法をやってみることで、初めて気付ける結果ってあると思うんです。それを単純に好奇心としてやってみたかった。今回の施策は「価格自由」という呼び方でやります。
箕輪:こういう呼び方をつくるところとか、うまいんですよね。
光本:10年でいろいろな事業、代表的なものをあげると「STORES.jp」「CASH」「TRAVEL Now」などをやってきたのですが、僕たちはEC業界のプロでもないし、金融業界、旅行業界のプロでもない。僕たちが手掛けるサービスは、どれも素人。
常に思うのが、ド素人だからこそ生める価値とか、空気を読まずにやるからこそ起こせる新しい波とか、気付けることがあると思うんです。
今回においても、取次さんとか書店さんとかとのルールやしがらみがあると思うのですが、新しい手法をしてみるのも業界全体が盛り上がる気がしました。「1500円で売るよりも儲かったね」が理想ですが、結果売れなくても、それはそれで結果自体に価値があるので、いいと思っています。
箕輪:発売まで時間がなさすぎるタイミングでこの書籍の販売の仕組みを考えたんですが、光本さんのその組み立て方が秀逸。売り方の打ち合わせをしていくなかで、光本さんの凄さがわかりました。
ぶっとんだアイデアを考えながらも、しっかりと関わる各プレイヤーの心理を捉えて組み立てている。すべてのリスクをわかったうえでフルスイングする。最悪のケースはこれくらいだからやろう。こっち側の人は損してしまうからインセンティブ設計を変えようとか。
こんな巧みに考えているのかと驚きました。あと動きが早い。QRコードの裏側のサイトは、今この対談中にはまだ完成していない(笑)。本を印刷して、読者に届くまでの間に作るんです。そのスピード感がすごいなと感じました。
光本:電子版は0円、紙の本は印刷原価390円で販売させていただき、掲載されているQRコードを読み取ることでサイトに飛びます。0円から1000万円まで選んで支払ってもらいます。そしてそれぞれの額によって特典がついてくるようにしました。
箕輪:1000万円の特典なんて、一緒に会社立ち上げられる権利や、500万円だと一緒にカジノ行く権利とかになっています(笑)。
すごいなと思ったのは、QRコードで投げ銭してもらうというのは実は誰でも思いつくことだと思うんです。でもその課金された額の半分は100万円ずつ読者にプレゼントするという発想だったり、ただ課金するだけではなく、額によって魅力的でユニークな特典が付いてきたり、これらは後付けで考えていったんですが、その一つひとつが人間の心理を突いている。
これは確かに盛り上がるし、アイデア一発だけではなく、行動の誘導がうまい。サイトなどのデザインもうまい。BANKのサービスの共通点だと思いますけど、体験として気持ちいい。
光本:課金総額の半分は、100万円単位でプレゼントします。書籍は「実験しようよ」という内容なのですが、実験するにもお金が必要なので、あなたのチャレンジに活用してください、という気持ちで還元します。