自信のあるアイデアが、自己中心的な企画になってしまう理由

「アイデア」を甘やかすな

版権:Kamaga/123RF 写真素材

「我田引水」という四字熟語がある。自分にとってつごうよく振舞う、自分さえよければいい、という、大変ネガティブな意味に使われる言葉だ。英語にも、Every miller draws water to his own mill. という、非常に近い表現がある。「粉屋はみな自分の粉ひき場へと水を引く」という意味だ。自分の粉ひき場や田んぼにせっせと水を流し込んでいる、自己中心的な人物が目に浮かぶ。

企画を立てる際も、自分のアイデアにせっせと水を流し込んでいるプランナーがいる。もちろん自分のアイデアに花を咲かせようと、懸命に水をやるのは悪いことではないのだが、アイデアを俯瞰できないと、そのアイデアにつごうのいいようにしか水を流し込まなくなる。次第に自分のアイデアにつごうのいいことしか見えてこなくなり、企画はどんどんそのアイデアを生かすためだけに膨らんでいく。

アイデアには良い面と悪い面、二つの相反する側面が必ずある。悪い面が存在するから悪いアイデアだとは言えない。むしろ、アイデアの持つ可能性を伸ばすためにも悪い面と向き合うことが必要だ。それができないと、アイデアに踊らされ、視野の狭い、悪い面をほったらかしにした自己中心的な企画ができあがる。そんな企画、だれが買ってくれるのだろうか。

アイデアは企画を積み上げていく出発点であり、そのアイデアを発想できた時のときめきは何物にも代えがたいし、それを企画に仕上げていくのは、本当に楽しくて面白くて仕方がないプロセスだ。しかし、だからこそ周りが見えなくなるし、自己中心的に陥ってしまう。アイデアには水をやるのも必要だが、水を与えず、徹底的に叩き、踏みつけ、鍛え上げなければならないのだ。

アイデアを甘やかさず、徹底的に鍛え上げるとは?

「良いアイデアなのに、提案先が保守的だから受け入れられない」と嘆くプランナーが少なからずいる。提案先のカルチャーを知ることは、アイデアに水を与えるよりもよっぽど重要だ。製品の形やネーミング、市場でのポジションを反芻するだけでも、企業のカルチャーがおぼろげながら見えてくる。

ターゲットをわかったように思ってしまうのも危険だ。動物園の動物を知っても、本当の動物の姿を知ったことにはならない。うわべだけを知る方法はいくらでもある時代だからこそ、ターゲットへの向き合い方が重要だ。アイデアをコテンパンにしてもらう覚悟で、ターゲットの中に投げ込んでみると、ターゲットもアイデアの生かす方向も見えてくることがある。

人生も企画も、叩かれて揉まれて強くなるのだ。

藤枝 テッド 和己 氏
西川コミュニケーションズ 顧問

2000年代中盤よりショッパーマーケティングの開発に従事し、北米のショッパー戦略デザイン会社、グローバルネットワークのショッパーマーケティング会社の日本法人代表を歴任2018年より現職。米国広告主協会(ANA)のデータマーケティング部門アワード評議員を務める。主な著作に「デジタルで変わる セールスプロモーション基礎」(宣伝会議)

 

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