ヤフーは、2019年5月17日(月)16時より、「DOUBT! THE MARKETING.~そのマーケティングを疑え~」をテーマに、マーケティングとは何か?を考える「Yahoo! JAPAN MARKETING SUMMIT 2019」を開催した。
会の冒頭にはヤフー 常務執行役員 メディアカンパニー長 宮澤弦氏が挨拶に登壇。「株主が変わる変革、ホールディングス体制をとるという変革、マーケティングもこの4月に新体制になり新しい出発点に立った。このような変革を表すため、昨年まではスーツを着ていたが、今年はTシャツを着て体現した。マーケティング業界の発展に寄与したい」と話した。
ひとつめのパネルディスカッションは、『DOUBT! THE CREATIVE.』。明石ガクト氏(ワンメディア 代表取締役/CEO)、鈴木瑛氏(ByteDance X Design Center/Head of X Design Center)、朴 正義氏(バスキュール 代表取締役)、渡辺裕介氏(CHOCOLATE Inc. 代表取締役)、モデレーターとして井上大輔氏(ヤフー メディアカンパニーマーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長)が登壇し、「好かれる広告とは何か」をテーマに議論した。
井上氏の「広告はなぜ嫌われたのか?」との問いかけにと、朴氏は「単純に情報自体が増加して溢れている。さらに言うと、自分で情報発信することもできるようになっているなど、やることが増えて広告をあえて見る余裕がないのではないかと感じる」と答えた。井上氏は以前、朝から12時までにいくつ広告を見たか数えたら120個以上だったという実体験を語り、会場内に「今日見た広告をひとつ以上覚えている人?」と問いかけると、このような広告やマーケティングに関心のある人が集まっているのにも関わらず約2名しか手を挙げなかった。
また鈴木氏は、「広告が嫌われるようになったわけではなく、役に立たない商品が多くなったのではないかと思う。情報に限らずモノやサービスも溢れている中、冷蔵庫を持っていない人に冷蔵庫を売るアプローチではなく、すでに冷蔵庫を持っている人に、さらに良い冷蔵庫を売るためのアプローチをする必要が起きているため、マーケティングの段階で難しくなっているのではないか」と話した。
渡辺氏は、「広告が一方通行であるから。昔はマスの一方通行の広告がコミュニケーションとして成り立っていたが、今はコミュニケーションも多様化しているのに、クリエイティブもバナーの出し方も企業のやりたいように一方通行になっている」と述べ、それを受けて明石氏は「昔はCMをつくるとそれだけで企業として目立つように、『映像』の力はすごいものだった。だんだんYouTubeやTikTokなどが増え、今が一番『映像』コンテンツの量が多い」と述べた。
そこから、「レゾリューション」「コンテクスト」に話がつながり、「消費者の文脈やコンテクスト、解像度が低いクリエイティブは嫌われるのではないか」との話があった。
また好かれるコンテンツについて、渡辺氏は「コンテンツの熱量、クリエイティブをつくる人の『業』が重要だと考えている」と述べ、「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした話を例に挙げた。渡辺氏は、「当社ではオリジナルコンテンツをつくっているが、企画書をつくって判断しないで、各自がコンテンツをつくるようにしている。広告は合議制だが、クリエイティブはつくってみないとわからない部分も多い。これも各自の熱量・『業』を重要視しているから」と話した。その話を受け、『業』について、「その人らしさ」「『業』とはその人が背負っている世界観」「出そうと思って出すものではなく、自然と出てくるもの」などの意見が出た。
井上氏は、ヤフーとしては広告を新しくつくっていきたいと話し、新しい広告商品やアワードを発表した。朴氏は、「お祭りメディアをアップデート」という広告案を発表。「日本最古(?)の電飾広告である提灯のある『お祭り』を電子化してデジタルメディアを活用する案を作成した。
明石氏は、「Yahoo! JAPAN じぶんCM」という広告案を発表。「好きなものや嗜好がみんな違う時代。そのみんなの好きなものの違いを一番知っているのはYahoo! JAPANではないかと考えた」と説明し、井上氏が「人によって知っている人や好きな人も違うので、見る人によって主演人が変わるというイメージ」と補足した。
また井上氏は宣伝会議と合同で、一般公募の広告商品アイデアのアワード、「Yahoo! JAPAN 広告商品アイデアアワード(仮称)」を開催すると発表。2019年7月上旬に募集開始を予定している。
井上氏はこのパネルディスカッションについて、「技術的にはどんどんローレゾ化している中で、コンテクストは実はハイレゾ化している。コンテクストをハイレゾ化していかないと失敗したり、炎上したりする」「あとは『業』、つくり手の思いをどうやって込めていくかが課題」とまとめた。