【前回コラム】「「思いつき」を「企画」に進化させる、愛しくも苦しい10のステップ」はこちら
企画は、誰かのために料理をするとの同じ
たとえば、あなたが今夜大切な誰かのために腕をふるって料理を作るとしましょう。作るのはお得意のカレーライスでしょうか。それとも肉じゃがでしょうか。ちょっと通ぶって、ポルトガル料理にでも挑戦してみますか。
さて、鍋やフライパンを手にする前に、まず考えなければならないことはなんでしょう。あなたが「作れる料理」、もしくは「得意な料理」でしょうか。きっと違いますよね。その料理を作ってあげる大切な誰かが、「今夜、何を食べたい気分なのか」を想像することではないでしょうか。昨日は揚げ物だったから、もしかしたら胃もたれしているかもしれない。だったら、さっぱりした冷製パスタなんかどうだろう。
イマジン。かつてジョン・レノンが語りかけたように、この世界に本当に大切なのは、愛と平和と、想像力です。俺はこんな料理を作れるんだぜ、というエゴをいったん横に置いて、想像してみましょう。
Imagine 1)なぜいま、その課題なのか
企業が出したお題。なぜ、ほかにもいろんなテーマがある中で、あえてこれを取り上げたのでしょう。時代感を意識して、その向こうにある「悩み」の本質は何か想像しましょう。
Imagine 2)本当に解決すべき“課題”は何か
そのお題を解決するのに、クリアしなければならない「本当の“課題”」はなんでしょう。目的(Objective)と課題(Challenge)は違います。課題は、目的地に到達するのを阻んでいるもの、と表現したほうがわかりやすいかもしれません。さらに課題は、時に目的のひとつ上のレイヤーであることもあります。
Imagine 3)キーとなるターゲットインサイトは何か
たとえばあなたがコンビニのお題に取り組んでいるとして、コンビニのことばかり考えていてもブレークスルーはありません。コンビニ企業が動かしたい人は、コンビニに行くと同時に、公園で子どもとピクニックしたり、居酒屋で上司の愚痴をこぼしたり、誰かに恋をしているふつうの人です。その人の生活に想像を巡らせたとき、彼ら・彼女らがほかに持っているであろう無意識の欲求と、コンビニに求めているものが共通しているかもしれません。こうした仮説を発見できると、企画の世界がグッと広がります。
Imagine 4)そのアイデアは本当にユニークなのか
自信満々で考えたアイデアも、(特に参加者が多い販促コンペだと)結構かぶります。自分と同じ発想の道筋を辿った人が大勢いると想像したほうがよいです。違いを生むのは、パッケージとしての斬新さであり、ディテールの詰めです。たとえばコンセプトワードのチョイス。たとえば自走させるキャンペーンの仕組み。いい企画は細部まで気が利いているものです。
まだまだ語りたいことはあるのですが、夕飯の支度をしなきゃいけないのでこの辺で。僕の家族は、今夜何が食べたいかなあ。
津田 裕 氏
マッキャンエリクソン
プランニング本部 シニアプランニングディレクター
クリエイティブディレクター
2002年マッキャンエリクソン入社。マイクロソフト、Xbox、日本コカコーラ、オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)、ジョンソン&ジョンソン、モンデリーズ、サンスター、GM、武田薬品、フィリップモリス、日本経済新聞電子版などのコミュニケーション戦略立案、ブランディング、コミュニケーションデザイン、クリエイティブ開発等を担当。共著に『よくわかる広告業界』(日本実業出版社)