対談者
山内祐也 氏:コメ兵 執行役員 経営企画本部 副本部長 経営企画部長 兼 事業開発部長
鈴木隆士 氏:ジェイアール東日本企画 第五営業局長
消費者とのタッチポイントを増やし、ブランド品に触れるきっかけを作る
鈴木:今、リユース業界、特に御社の強みとなっているブランド品のリユース市場はどのような状況なのでしょう。
山内:リフォーム産業新聞が発行している「中古市場データブック」の2018年度版によると、リユース全体の市場規模は2兆円弱になっています。そのうち、当社で扱っているような宝石、時計、ブランドバッグなどのブランドリユースはおよそ2400億円を占めています。
リユースの市場は成長しています。中国人旅行者の「爆買い」の追い風は元の急落で小休止した時期もありましたが、右肩上がりの傾向は続いています。ただ、景気や為替などの要因に影響を受けやすく、経営方針としては乱気流の中を飛ばなければいけないという認識で計画を立てています。
鈴木:買い取った商品の販売先は一般消費者だけではなく、同業者もあるのでしょうか。
山内:私たちの店舗は、立地に合わせた「編集型」で作ることを重視しています。そのため、店舗によって扱う商品やブランドも異なります。そこから外れたものを別の事業者にオークションなどを通じて販売しています。
同じリユース事業者でも販路など、それぞれ強みが異なっているので、競合関係にありながら、ときには協力関係にもある。お互いにお客さまが求めているものを仕入れて、販売できることが、最終的にはお客さまにもメリットがあるととらえています。
こうした取り引きの中で、真贋を見極め、適切な価格で買い取り、販売することで積み重ねてきた信頼が私たちのベースになっています。
鈴木:やはり真贋判定は重要ですか。
山内:真贋判定と価格設定は、間違いなくコアコンピタンスになっています。年間140万点の商品を扱っており、それだけの量の真贋を判定し、適正な価格をつけているという知見は私たちの財産ですが、それらは当然あるものとして、そのうえで何を提供するかがポイントになってきています。
今、私たちが注力しているのは、タッチポイントをいかに作るかということです。マーケティングチームがポイントとしているのも、まずは多くの人にリユースに触れていただくことです。いかに自分に関係のあるものとしてブランド品を考えてもらえるような、エントリーのきっかけを作るかを重視しています。
また、近年はブランド品を購入する人たちがモノを売るときに、どれだけ高く売れるかというリセールバリューを意識することが増えています。こうした価値観の変化を購買行動にどう組み込んでいくのかも意識しています。
鈴木:店舗もタッチポイントの一つだと思います。編集型の店舗作りにはターゲット設定が必要です。
山内:基本的にはある程度可処分所得があり、ファッションに関心の高い40代〜50代をターゲットとして考えています。近年はこれに加えて、デジタルネイティブのミレニアル世代をいかに取り込んでいくかも課題としています。
店舗は、例えば大須の名古屋本店と名古屋駅前店でも、新宿店や銀座店もそれぞれ違う雰囲気、品揃えになっています。とはいえ、コアとなる主力ブランド、バッグではルイヴィトン、エルメス、時計ならロレックス、オメガのスポーツモデルという定番はおさえながら、エリア特性や顧客層による商品の編集を行っています。
タッチポイントという意味では、店舗だけではなく、ECや「KANTE」のようなCtoCのプラットフォームも重要です。
私たちはブランド品のリユースというニッチな市場で事業を展開していますが、お客さまはコメ兵だけを利用するわけではありません。他のフリマアプリやネットオークションを見ることもあるでしょうし、別のリユース事業者のECサイトを見ることもあるかと思います。
そうした状況にあって、私たちがECサイトや「KANTE」アプリでコメ兵の真贋判定や適正な価格づけを背景にサービスを提供することは、タッチポイントになりますし、私たちのブランドを好きになってもらう機会を増やすことにもつながります。お客さまにとって何が価値かを考えたときに、多様なタッチポイントは絶対に必要になってきます。
AIの導入はより良い労働環境を作るため
山内:私たちがターゲットとしている層でも、ブランド品を売るときの動機はさまざまです。新しいものを買うために家の中のスペースを開けたい、断捨離したい、売った資金で新しいモノ・コトを楽しみたいなど色々なニーズがあります。ニッチな市場にも関わらず、購買行動が一定ではないという点では少し特殊な環境にあると思います。
鈴木:そうなるとマーケティングが非常に難しいですね。