第14回「販促コンペ」の作品応募は6月16日13:00まで
応募はこちらの販促コンペ特設サイトから受け付けております。
今回は、「企画書がうまくまとまらない」と思っている方や、「もうちょっとうまく言えないかな」「その前にそもそも何をしていいのか、わからなくなってきちゃったよ」といった方のヒントになることをお伝えしたいと思います。
企画書とは、企画を実現するために、頭の中にあるイメージを他人と共有する設計図です。なので、企画書が書けないときのパターンは、おおよそ次のようなものかと思います。
脳内・思考・妄想
↑
思いつかない。
思いついたけど、これでいいのか、わからない。
思いついたけど、おもしろくない。
思いついたけど、どう書いていいか、わからない。
書いてみたけど、なんかちょっと違う。
書いてみたけど、なんだかごちゃごちゃしている。
↓
手先・表現・構想
要は、思考をどうやって表現するか、妄想をどうやって構想にするか、という、脳内から手先のいくつかの段階のなかで、つまずいているということです。
「プランナー」というと、「夢を語ればいい」と思う人も中にはいるかと思いますが、直訳すると「計画者」。結構綿密に考える必要があるのです。
イメージを固めるために、頭と手を動かす
上で挙げた悩みのなかで、特に最初の3段階を突破するには、とにかく頭と手をくり返し動かす必要があります。
プランナーの仕事は、頭の中のもやもやとしたイメージを、誰にでもわかるように、さらには「いいね」と思ってもらえるようにすることです。そのため、そのもやもやしたものを、かっちりとイメージできるところまで進化させないと、設計図をつくることはできません。
で、どうやってイメージできるようにするかというと、愚直に、とにかく頭と手を行ったり来たりすることです。理論と具体的なことを行ったり来たりする。
たとえば、誰がその商品を買うのか、誰に口コミで広めるのか…と想像します。そのアイデアを今度は絵にしてみて、他人がそれをどう見るかを想像する。足りない要素があれば追加する。さらにそれをくり返すことで、自分のもやもやしたイメージがどんどんはっきりしてきます。こうした作業は企画づくりの基礎です。
企画がまとまらないときの
速効処方7ルール
イメージの輪郭がある程度はっきりとしたら、さらに誰にでもわかるようにする必要があります。それは先程のお悩みの中の後半の部分にあたります。
思いついたけど、どう書いていいか、わからない。
書いてみたけど、なんかちょっと違う。
書いてみたけど、なんだかごちゃごちゃしている。
これらにも対応する術(すべ)があります。
企画書にまとめる上で、これさえ覚えておけば企画が整理される、7つのルールを紹介します。
基本の7ルール
① 1つのページには1つの情報
② 1ページの基本構成は、説明+挿絵
③ 1文は3行以内。平易な言葉で書く
④ 書体は1種類
⑤ 使う色は2色
⑥ 写真や図は、辺とサイズをそろえる
⑦ ジャンプ率を意識する
それでは、詳しく説明していこうと思います。
① 1つのページには1つの情報
これらのルールの主成分は、話を分解して整理することです。
「販促コンぺ」の過去の作品の企画書も見ましたが、中には1つのページに5個、6個と情報を書いているケースが見られました。1ページに複数の情報を入れていたら、一度全部バラバラにしてみてください。そうすると、自分が当たり前だと思って触れずにいたポイントや、聞き手の理解の助けになるような情報が見つかることもあります。
そしてバラバラにしたあとは、1つのページで伝えることが1つだけになるように、改めてまとめます。すると、そこにストーリーが生まれます。
さらにそれをどう並べるのか、起承転結にするのか、箇条書きにするのか、などは一歩先のステップになるのですが、まずは基本として、情報の整理と再構築を意識するとよいです。
② 1ページの基本構成は、説明+挿絵
基本的には、上半分に1行のテキスト、下半分に挿絵などのビジュアルを添える。ヒヤリング結果の共有、冊子の提案、コンセプトの説明など、どのような場合でも、このパターンでまとまります。
③ 1つの文は平易な言葉で3行以内
文章はなるべく簡単なことばで、3行以内に収めましょう。
文は凝縮する際に便利なやり方のひとつは、主語と動詞をなるべく近づけることです。日本語は、主語と動詞の場所がある程度自由な面があり、ともすれば、ある動詞の主語がどれなのかが、わかりづらくなることがあります。
また、修飾語はシンプルな言葉を使うべきです。具体的には、漢字が連続する熟語のようなものを避けたり、複雑な言葉を避けたりする、などです。
プランナーの中には、やたらと難しい言葉を使いたがる人がいます。「これは極秘にしてください」と言えばいいすむのに、わざわざ「重大秘匿何とか事項」と言うケースです。これが行き過ぎると、「馬から落馬する」のような重複にも気づきづらくなります。
本当に伝えたいことは何か、と考えながら文章をそぎ落とし、できるだけ、平易なことばで書きましょう。
④ 使う書体は1種類
⑤ 使う色は2色
なるべく相手の頭に負荷をかけないで理解をさせることが大切です。
書体の種類が多かったり、たくさんの色を使っていたりすると、人間は自然とその書体や色が用いられている理由を考えてしまいます。
そのため、書体は基本的に1種類。意味を持たせる場合は2つまで、ということを意識すると良いです。
おすすめなのは、HB角ゴシックや創英角ゴシック、ヒラギノ、こぶりなゴシックなどの癖のないもの。反対にあまり使わないのは、創英プレゼンスとか、ポップ体などでしょうか。これらは「意図」を感じてしまうので、あまり勧められません。
色も同様です。変化があると、その理由が気になってしまう。強調したいもの、その他、という2色で十分かと思います。表計算ソフトやスライド作成ソフトのテンプレートではカラフルになりすぎるきらいがあります。意識的にコントロールしましょう。
⑥ 写真や図は、辺とサイズをそろえる
デザイナーの方にとっては常識かもしれませんが、デザイナーでないプランナーにとっては、レイアウトもある程度理解しておくといいです。
写真の左辺と右辺/上下のサイズをそろえるだけで、整理されて見えます。スライド作成ソフトに「サイズ調整」機能があれば、一括でできます。
⑦ ジャンプ率を意識する
「ジャンプ率」とは、級数(文字の大きさ)の差を指します。ジャンプ率は、最低2ポイント以上つけましょう。すると、重要なことと、その補足の方法の差が目に見えて、わかってきます。
ちなみに、級数や、先程の画像のサイズ調整などもショートカットキーやコントロールキーを活用することで省力化できます。1日では数分にも満たないかもしれませんが、1年で見ると10時間以上の節約になる。こういったテクニックを使うと、今回の「販促コンペ」応募締め切り前など、ギリギリの時には助かるかもしれません。
応用編:聞き手の目に入る順に情報を並べる
ここで少し応用編ですが、レイアウトの並べ方の話です。
人が理解する順序は、目の動きで決まります。そのため、企画書は目に入れる順番に情報を並べると、勝手に企画書がストーリーを語ってくれます。この点を意識しましょう。
たとえば図解なら、順接の形で示すべきだということです。ひるがえせば目の動きに沿って情報を並べないと、意図したように伝わらない、ということになります。
例えば、「AだからB」だということを示したい場合。
A
↓(だから、ならば、の次に、~を受けて)
B
B
↑(だから、ならば、の次に、~を受けて)
A
矢印が接続詞の役割を果たし、2つの図解は同じことを示していますが、「↑」の矢印になると、違和感があります。目の動き(=情報が入ってくる順)と配置が逆になるため、理解するための負荷を聞き手に与えてしまうのです。
このように順接の形で整理するためには、ちゃんと自分の言葉で説明できるようになっておくことが必要です。自分の企画がわかりづらいと感じたら、とにかく周りに話してみる。で、うまく説明できていたら、それを落とし込むだけで、いい説明ができます。さらにそれを図形に置き換えてあげれば、いい図解になると思います。
ここまでで言いたいのは、企画書を構成する要素の一つひとつの意味を考える、ということです。たとえば「自分の企画書には必ずこのキャラを入れています」という人もいたりしますが、邪魔なものは書かないほうがいいです。
最終的には、提案の聞き手は、自分の理解する方法でしか世の中を理解できません。そのため、なるべく要素をそぎ落として、シンプルにすることで、聞き手に誤解を与えないようにすることが大切です。
提案先の「好き」を把握する
もう少しだけお伝えしておきたいことがあります。それは、提案相手の思考を読むことの重要性です。
僕がまだ3年めのころ、14年前ほどの話になります。門前仲町(東京都)の、とある居酒屋に、初老のクリエイティブディレクターとふたりで行きました。僕が「飲みに行かせてください」とお願いしたわけです。
そこについたら、突然その人が、「お前は、レオナルド・ダ・ヴィンチがすごい理由がわかるか?」って聞いてきたんです。何の話だって思いますよね。何だと思いますか?
これ、答えは「パトロンを見つけたから」でした。「その時代、レオナルド・ダ・ヴィンチぐらいの技術を持った芸術家はいっぱいいた」と。「ただ、そいつらはパトロンを見つけられなかったから作品が残せなかった。だからダ・ヴィンチは、芸術家である前に商才がすごいんだ」という話をしていて。「だからきょう、俺というパトロンを見つけて居酒屋に来たお前は偉い」っていう謎の褒められ方をしました(笑)
つまり、ダ・ヴィンチはパトロンが価値を認める作品をつくることで、後世に作品を残すための制作環境を整えた、という話です。
このような芸術を、ゴッホのような「純粋芸術」と区別して「目的芸術」といいます。
「販促コンペ」を考えると、応募者の方々はふだんの業務ではそうはしないのに、「販促コンペ」になった瞬間に何かおもしろいことをしなきゃいけないと考えて、つまり純粋芸術に走ろうとしてしまうことがあります。
応募する企画は課題ありきの目的芸術なので、さきほどのクリエイティブディレクターの言葉を借りていうと、「パトロンが価値を認めるかどうか」ということが重要になってくると考えています。
ふだん相手が何を考えていて、どんなものが好きなのかをきちんと把握しておく。もし僕らが料理人だったとすれば、レストランに来たお客さんの好みに合わせた味付けをすると思います。そういったふるまいが、プランナーとしてはすごく重要なことです。
最後に、僕らも時々自分の考えを少し偉そうに話してしまって、反省することもあるのですが、提案先となるクライアントは、僕らの何百倍、何千倍の時間と労力を費やし、その商品のことを考えてきているということです。
そのため、クライアントの従来路線に沿うことも当然アリですが、提案先がこれまで考えたことがなさそうな企画を提案する。これも重要なポイントだと考えています。
例えば、普段とは違う場所で売る、普段とターゲットを変える、直接売るのをやめてみる、など。そういうふうに考えると、少なくとも初期段階の「思いつかない」といった悩みは、解消されると思います。
ということで、がんばった暁にはもしかしたら100万円も待っているかもしれません。みなさんぜひ、がんばってください。
江波戸 康友氏
電通
第2統合ソリューション局
ソリューション・ディレクター
2003年電通入社。16年の広告人歴のうち14年を「プロモーション」という名がつく部署で過ごす。その間、本人としては広告会社のクライアントの8割くらいの業種で経験を積んだと思い込んでいる。マスメディアを中心としたものやイベントから、販売員向けマニュアル制作、クライアントの商談同行など、消費者の目に触れるところから触れないところまで、手段に関わらず「売上」を作るためのプランニングを日々実践中。