ブランドDNAの理解があるからこそ、“非連続”の発想に挑戦できる — FWD富士生命、日本KFC、マンダム、ワコールの市場開拓の道

BtoBtoCの業態だからこそのブランド価値伝達の難しさ

JAPAN CMO CLUB CCO 亀山將氏。

マーケターは顧客接点の最前線に立ち、お客さまの手元に商品・サービスが届くまでを見守る役割がある。お客さまの手元に届いた際に、いかにして自社の商品・サービスの魅力を感じてもらえるかが、マーケターが取り組む価値づくりの根幹だからだ。

そこでマーケティングの理解を広めるだけでなく、消費者起点の発想の重要性や自分たちのブランドに対する理解も社内で広めていく役割もマーケターに求められるという意見が出てきた。

特に多くの企業がBtoBtoCのビジネスモデルを採っている。FWD富士生命保険における販売代理店、日本ケンタッキー・フライド・チキンにおけるフランチャイズ店舗、マンダムとワコールにおける小売店と、お客さまと企業の間を仲介する「B」が存在する。自社の社員だけでなく、消費者との間を仲介するパートナーにも、ブランドのDNAをいかに理解してもらえるかは、難しい課題だ。

小山氏は「自分たちは何を提供している企業なのか、ターゲットは誰なのかを再定義し、それを社内やフランチャイズ店に広めるなど、インターナルのブランディングに改めて取り組もうとしている。そして、一つひとつの『作業』に心を入れて、『仕事』にしていこうという発信を始めている。こうした認識が広がれば接客が変わるし、たとえ店舗内のオペレーションが変わらなくても、お客さまに提供できる体験価値が高まると考えている」(小山氏)。

業種業態が異なる4社が共通して重視するマーケティング課題とは

研究会ではディスカッションの最後に、いつも各参加者に感想を聞いている。
「生活スタイルや価値観の変化とともに、消費者が変われば、企業もそしてマーケティング活動も変わらなければならない。業界は違えども、いまあらゆる産業のマーケターがこの課題に向き合っているのだと感じた」(立川氏)。

「当社はBtoCのビジネスだと思われがちだが、間に入る『B』がある。フランチャイズ店舗を動かさないと消費者に向き合うことはできない。とはいえ、間に入る『B』だけを見ると、お客さま不在の議論が生まれてしまう。他の企業でも同様にこうした課題を持っていることがわかった」(小山氏)。

研究会での議論が深まるほど、マーケティングの本質は業態を超えて共通するものなのだという参加者の理解も深まっていく。

「未来は過去の延長線上にあると考えてしまいがちだが、企業が生き残っていくためには非連続的な価値をつくりあげることが重要」と話したのは西村氏。そのために消費者の声を把握し、寄り添うことがマーケティングのコアになるとし、「商品やサービスに有形無形の違いはあるが、価値のつくりかた、伝え方ともに共通点があるのだと感じた」とまとめた。

女性向けの商品が多いワコールでの仕事を「自分にわからない商品を売っているからこそ夢がある」と表現した猪熊氏。研究会の議論を経て「それぞれの企業に文化や特性があり、一口に改革をしようといっても難しい。それでも、小さなことからコツコツやっていかないといけないと感じた。みなさんが課題感や悩みを抱えながら仕事をされていることがわかって安心した」と話した。

研究会では、各社のブランドを体験できるアイテムを参加者に持ち寄ってもらう。商品そのものの場合もあれば、コンセプトブックなど、自社のブランドの考えが詰まっているとマーケターが持ち寄るアイテムは毎回、バラエティに富んでいる。

マーケターが向き合うのは、日本社会が抱える課題

研究会を総括して加藤氏は「これまでの研究会で、多くのマーケターが向き合う課題は、日本社会が抱えている課題であることがわかってきた。市場の成熟化、少子高齢化といった日本社会が抱える課題に、どう向き合えばよいのか。そこでは消費者を理解するだけではなく、今の時代に合った価値を提供できる企業組織をつくるため、社内に対する働きかけも必要とされている」と話した。

さらに「『JAPAN CMO CLUB』は『日本に突き抜けた成長力を』というビジョンを掲げており、活動を通じて、日本を活性化できればと考えている。今回の研究会で改めてCLUBに参加する同士とも言えるマーケターの皆さんと、このビジョンを実現させていきたいという想いを強く持った」と続けた加藤氏。

課題だけでなく、志も同じくするマーケターが集い、コラボレーションすることで、日本社会に、これまでにない価値を提供できる存在を目指していきたいとの展望が示された。

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