人々の生活や街に溶け込むモビリティをつくる TOYOTA「未来プロジェクト室」の挑戦

Frogはいかにして生まれたか

前田:(OPEN ROAD PROJECTの資料を見て)プロジェクトとしては、、未来プロジェクト室全体のミッションとして、2030をターゲットに、トヨタとして生活者に寄り添った新しいモビリティ+サービスを開発していこう、という大きな目標の中の一つに、Frogがある、という考え方で合っているでしょうか?

永田:はい。そういう意味では、Frogも未来室で多数手掛けているプロジェクトの一つです。今の形が最終形かと言うと全然そんなことはなくて。我々が考える未来に、こういう新しいモビリティがどういう風に生活者に受け入れられるかということを考えています。

前田:一種の実験といいますか、どんどん更新していくことが前提のプロジェクト、ということでしょうか。Frogは一見して明らかにトヨタがつくるモビリティという概念から大きく逸脱している移動手段だという感想を持ちました。Frogは実際にどこで、どのような移動体験を提供してくれるんでしょうか?

永田:100年に一度の大変革期と言われているなかで、トヨタとしてどういった将来像を描くか考える必要がありました。そのときに、移動という軸で考えると、それは生活全体に関わってくるよね、ということに気がつきました。

今までの移動はいかに効率的に目的地に素早く到着するかという事が主に考えられてきましたが、移動そのものをより広義に捉え直して、移動体験をより豊かにする観点でコンセプトを考えました。未来プロジェクト室で手掛けている「my route」(マルチモーダルアプリ)も同様の考えの中から生まれたサービスです。

話を戻して、Frogのコンセプトを考える中で、街づくりがテーマとして出てきて。トヨタがモビリティ・カンパニーにシフトすると言ったときに、生活全体を切り取ると、街づくりが大事になってくるんじゃないかと。

で、Frogがどのように生まれたかと言うと、サンフランシスコにトヨタのデザインオフィスがあって、そこで生活しているなかで、街を走っているトロリーバスなどを見て着想しました。

前田:サンフランシスコの街中を走りながら、人がどんどん乗り降りしていくイメージがあります。

永田:そうです。そこから着想したFrogのようなモビリティがあったら面白いんじゃないかというアイデアが出てきたんですが、西海岸だったらフィットするかもしれないけど、日本で試した時にどういうことが考えられだろうか…と。

これを日本に持ってきたらどういう課題を解決できるのか、ということを考えた時に、In-Area(街中の短距離の移動)で気軽に使えるモビリティがほとんどないなと。シェアバイク、サイクルとか、意外とポートまでいかなければいけない、外部決済必要、子どもからお年寄りまで使えるものも少ないと。

動く歩道にしても、好きな時に乗り降りできません。長い歩道が街を分断してしまって、街の魅力が引き出されない。街を訪れる人、そこでの人々の生活に溶け込んでいる、楽しく移動できるモビリティはないか、という理想像を考えました。

これから2030年や40年に進んでいくなか、スマートシティ化が進むかもしれませんが、ともすると未来の街は意外と無味無臭、テクノロジーリッチになってしまい、、人が楽しく生活してるっていう街にならないかもですよね。全部機械が運んでくれて、人はどんどん移動しなくなって…

前田:極端な話、一種のディストピアのような…

永田:そうです、そうです。街づくりにとって大事な要素としてコミュニティがありますが、この時に、「モビリティがコミュニティにできること」というコンセプトがあるんじゃないかなと。スマートシティは否定しないのですが、そこと共存していく道を考えていくなかで、トヨタらしさをもっと出せるようになってくるんじゃないかなと。いかに人と人が楽しくコミュニケーションをっているかとか、そういったところをモビリティを通じて我々がいかに提供できるか、ということを考えています。


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次ページ 「「コミュニティに貢献するモビリティ」というコンセプト」へ続く

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