新しい世代が恋する未来をデザインするために

新しい世代(エントリー)を本気で獲らないと、どうなるか?

国の統計調査によれば、日本の人口のピークは2008年。出生率が死亡率を下回る自然減は2007年以降続いていて、2018年には約45万人もの人口が減っているのだそうです。しかも、日本の場合、65歳の高齢者の割合が28.1%(2018年9月総務省発表)と、著しく少子高齢化が進んでいるのが特徴です。2036年には3人に1人、2060年には約40%が65歳以上の高齢者になる(!)と推計されています。

仮に日本という国を1つのブランドと捉えると、“エントリー層が少なく、離脱層が極端に多い”状況だと言えます(正確に言うと60歳以上の団塊世代と40代の団塊ジュニア世代の2つの人口の山があります)。

ここ数年は人手不足がいよいよニッチもサッチも行かなくなって社会全体が「あれ、いよいよ本当にヤバいかも!?」と認識し始めた感があります。企業の人材採用が難しくなったなどのニュースだけではなく、私の身近な生活圏でも最近「お客さんはたくさん来てくれるのですが、人手が集まらなくて閉店します」というお店があって、問題が本当に差し迫ってきていることを実感します。

これがさらに進むと、公共サービスが行き渡らなくなったり(過疎化の進む自治体では現実になりつつあります)、年金制度が揺らぐ可能性を指摘する人もいます。何もしなければどん詰まりの未来が待っているのは、容易に想像できます。

ところで、少子高齢化は20年ぐらい前からヤバそうだと指摘されていたような記憶があります。統計上は、どうなるのかが見えていたはずなのです。しかし自分を含めた日本人は「今の仕組みを改善すれば、どうにかなる」または「まだ実感もないし、とりあえず脇に置いておこう」くらいの意識でいたのではないでしょうか?

もちろん、解決のための方策はいろいろと取られてきたはずですし、2014年には政府が「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」を打ち出しましたが、本質的なところでは選挙のためにマジョリティを意識した政策をとり続け、問題を先送りした結果だと見ることもできます。

ブランドがエントリーを獲得するための十分な投資を早い段階から行わないとどうなってしまうのか?人口問題はこのことを如実に語っているように思います。

新しい世代はどんな人たちなのか?は、街へ出ないとわからない

体制側や供給側にいると問題がどこまで本当に深刻なのか、なかなかわからないことが多いものです。その一方で、世の中に新しい技術や仕組みが次々に登場し、「新しい当たり前」が社会や生活を変え始めているのもまた事実です。シェアリングエコノミー、フィンテック、ソーシャルキャピタル、評価経済、AIなどはすでに急速に日常に浸透し始めています。これまで当たり前だった体制や仕組みは、ある日突然にオールドスクールになってしまう……そんな気がします。当然、ブランドも時代の変化に揺さぶられているわけです。

そして、重要なのは「近い将来、新しい仕組み、新しい価値観の中で育った世代が社会の中心になる」ということです。どん詰まりになって打ち手がなくなってしまう前に、我々のようなマーケッターがやるべきなのは、まず固定観念や常識を捨てて、社会へダイブしてみることです。新しい当たり前を謳歌する、新しい世代とはどんな人なのか、きちんと向き合ってみることが必要だということです。

「リプトン」や「ピノ」のポップアップストアを通じて、私が接した若い世代は、常に欲望に素直でした。新しいことをどんどん試して、常識や序列にこだわらず、自分たちがいいと思った価値をシェアして増幅していくという特徴がありました。彼らにとっては、いま大人が当たり前だと思っている仕組みの多くはオールドスクールであって、彼らはそれらを尻目に新しい価値とセッションするように軽々と生きているように見えます。

そんな彼らに振り向いて恋をしてもらうためには、彼らなりの生活価値や情報コードを知り尽くしている必要があります。そして、ブランドがすべきことは外へ出てコミュニケーションをとって、彼らに向けて新しい価値をトライ&エラーしてみることです。その端的な手段がポップアップストアなのですが、長くなってきたので、この話はまた次回ということで!

藤井一成氏(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター))

1968年広島市生まれ。1992年早稲田大学政経学部卒業後、電通国際情報サービスに入社。1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを数多く手掛ける。その後、グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き、「至福の時間をつくる」クリエイティブブティック「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。消費者の“いま”の視点に立ち、ブランドが持つ価値を再編集することで新たなエンゲージメントを築き、ブランドと消費者、社会を次のステージへとポジティブに動かす。「正しいことを楽しく実践して、すべてのステークホルダーを幸せにしたい」という信念のもと、戦略、クリエイティブ、体験デザイン、PR、デジタルなど、360°の視野で構想から実践までを行う。

 

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藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)
藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂 代表取締役社長/クリエイティブディレクター)

1999年から博報堂でインタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを手掛け、その後グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き「ハッピーアワーズ博報堂」に社名を変更。

“これでいい…”という消極的選択が溢れる成熟社会で、「ブランド」と「生活者」の関係性をアップデートする“至福”の体験価値をクリエイティブし、ブランデイングとマーケティングの両輪を動かしている。

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