40分ノーカットで撮影した映画
澤本:僕は本当にお聞きしたいことがいくつかあるんです。最近、出られていた映画『LOVEHOTEL に於ける情事とPLANの涯て』を拝見したんですけど、あれはワンカット撮影なんですか?
三上:ありがとうございます。どこまで言っていいのかなと思うんだけど、僕は言っちゃっていいと思うんですよね。黒味(くろみ)で繋いでたりするので、何カットかには分かれてるんですけど、それにしてもフィックス(カメラと画像を固定したまま撮影する)なので、その間は絶対に切れないですよね。なので、よく見る必要は全然ないんですけど、40分ぐらいのカットが2つ入ってます。
澤本:40分回しっぱなしということですよね。凄いな。
三上:回しっぱなしです。だから事前に稽古をとにかくやって、カメラポジションからアングルの角度まで全部稽古で線を引いて、その中だけで芝居するんですけど、それだけだと嘘くさいじゃないですか。だからオフをどこで使うかも。
澤本:一回、画面から出ていったり。
三上:そう、それも全部計算して、稽古をしたつもりなんですよね。
澤本:どこまで言っていいかわからないけど、シチュエーションがラブホテルで、そこにカメラが定点で置いてあると、ものすごくやらしいんだなと思いました。カメラ割りせずにずっと撮ってるから、逆に僕がどこかに隠れて、ラブホテルでやってることを覗いている感覚になって。とてもエロい気持ちになりました。
権八:見る側が覗き見してるようなね。凄い作品ですよね。これを聴いてる方は何となくわかるような、わからないようなだと思いますけど、とにかく長回しで。
三上:ということはね、演者が素っ裸にされるわけですよね。全部出ちゃうから、まずそれを役者が覚悟できるか。そのうえで整えていけるかということなんですけど、今回は本当に仲間に恵まれましたね。一緒にやった酒井若菜さん 波岡一喜くん、本当に役者としてやりあうことが楽しかったですね。
澤本:もちろんセリフがあると思うんですけど、あんなに長かったら、セリフ間違えることも?
三上:あぁもう、山ほどありますね(笑)。
澤本:でもそれはそれなりでやっていくということですかね?
三上:僕が出てないところもあるんですけど、出てるところ、ほとんどワンテイクです。
澤本:え、ワンテイク?
三上:2回撮影やってないです。だって40分を1日に何回もできないでしょ。あのテンションなので、できないことはないけど、それ以上のことは絶対に出てこないと僕は思ってるので、少々のことは目をつぶってくださいと言って。ワンテイクです。
澤本:凄い。映画全体でそんなにいっぱいテイク撮ってないということですか?
三上:うん、3日で終わったから(笑)。細かいところは日にちかけてますけど。
権八:そういうことになるよね。凄い映画ですよね。
澤本:本当にリアルじゃないですか。バーンと押し倒すときはこれセリフじゃないんだろうなという。「ギャー」と言ってたりするから。ああいうのはアドリブですか?
三上:(笑)。ただ基本はアドリブない指針なんです。台本通りに、余計に足してもいないし。僕はそういうのあまり好きじゃないので。そうやってやればやるほどナチュラルに見えるでしょ? と思うかもしれないんだけど、逆にナチュラルじゃなくなっていくんですよね。よっぽどアドリブでうまい場合はありますけど、足せば足すほどダメになると僕は思います。