6月21日には、その内容を踏まえてキッチハイクの山本雅也氏との対談も実施を予定しているので、ぜひチェックしてみてください。
幸せ×未来×サービスデザイン ブランドと人との、これからの絆の作り方@銀座蔦屋
ミレニアル世代の新しい価値観が消費行動を変える
私が最近感じるのは、世論がテクノロジー主導で動きすぎているということです。テクノロジストや研究者は、「自動運転が始まるとこうなる」、「テクノロジーの進化で店舗が無くなる」など、さまざまな主張をしていて、世の中にはいろんな“未来像”があふれています。
たしかにそういう時代が来るかもしれませんが、我々マーケターには、テクノロジーの進化でどういうことができるのかということよりも、それがいつ起こるのかということの方が重要です。マーケターの仕事は1年後や2年後の数字を作らなければなりません。
ですから、メディアで語られるいろいろなテクノロジーの未来像を俯瞰し、それが起こるとしたらいつなのかということを意識しながら、来年、再来年のことを考えていく必要があると思っています。
まず、現在どのような社会的変化が起きているのかを、3つの視点からお話したいと思います。
1. 価値観の変化。これは、簡単に言うと「ターゲットの変化」です。ターゲットになるミレニアル世代は新しい価値観を持っています。
2.消費行動の変化。新しい価値観によって消費行動はどのように変化するのでしょうか。
3.オートメーション時代への構造変化。
ミレニアル世代の価値観を考えるうえで重要なことは、彼らがデジタルネイティブであるということです。1981年から1996年に生まれたミレニアル世代は、思春期からモバイルを使いこなし、世界中の人たちとアクセスすることを身体機能として身につけています。
そういう彼らが重視するのは、「コスト効率・利便性・スピード感」といった合理性です。また、多様性を尊重し、縦社会でいかに支配するかよりも、いろいろな価値観に接続できる、自分の人生を豊かにする横社会を重視するという特徴があります。彼らは世界中の人や知識やサービスにアクセスして、さらに共同体も組成します。
そうした価値観によって、消費行動はどのように変化しているのでしょうか。まず、「シェアリングエコノミー」という実態があげられます。シェアリングは一過性のトレンドなどではなく、確実に起きている「シフト」です。シェアリングのプラットフォームを提供する企業の手数料は、2015年は約400億円でしたが、今後は爆発的に伸びて、2021年には約1100億円規模になると見込まれています。
シェアリングエコノミーというと、企業が行うカーシェアリングやサブスクリプションモデルを思い浮かべるかもしれませんが、経済産業省は、BtoCではなくPtoP、すなわち個人と個人のシェアリングのやり取りを「シェアリングエコノミー」と規定しています。
もうひとつ面白いのは、異業種がつながることで大きなサービスが生まれるということです。事例をあげましょう。Airbnb(民泊)は、利用していない家を利用したい人に貸す、個人と個人の間のサービスです。キッチハイクという企業は、料理を作りたい人が料理を食べたい人に料理を作る、マッチングプラットフォームを運営しています。ウーバーのようなモビリティの企業もあります。
こうしたサービスがつながるとどうなるでしょうか。宿泊施設、移動、食事、これらがすべて一つのサービス形態として完成して、ホテルでは味わえない、人と人とのつながりを感じる楽しい体験がパッケージングされます。
このようにシェアリングエコノミーの異業種がつながることで、よりクオリティの高いサービスを生み出すことができるのです。
オートメーション時代の構造変化では、IoT、BIGデータ、AIについていろいろと言われていますが、僕らのようなマーケターにとって、AIはパーソナライズを生み出すツールであり、IoTはデータ収集のツールです。IoTで集めたデータを、BIGデータとして蓄積し、AIでパーソナライズしたサービスとして顧客に提供する。これがマーケターにとってのオートメーション時代の構造変化だと言えるでしょう。
これらのことを前提として、これからの時代に必要な「ブランドをアップデートする10の視点」についてお話ししていきます。