ブランドをアップデートする10の視点
視点1:目的は「購買から推奨」へ
モバイルでいろいろなところにアクセスできる今、人々は気になるブランドを見つけると、そのブランドや企業について調査します。特に重視するのがユーザー評価です。もし、ユーザー評価が低ければ、広告のイメージがいくらよくても、当然購買には至りません。逆に評価が高ければ、広告のイメージが少々よくなかったとしても、購買行動を起こす可能性は大きくなります。
企業は、これまでのように、いかに買わせるかということよりも、いかにユーザーに推奨してもらうかを考えければいけません。重要なのは商品購入後です。顧客満足度を高めて、推奨したくなるような企業やブランドとして存在する必要があります。
視点2:信用は「認知から評価」へ
昔も今も信用は大事ですが、信用を担保するものが変わりました。昔は「テレビ広告を打つような大企業だから信用できる」という思い込みが信用を担保していました。ですから企業はマスメディアに大量の予算を投下してきました。しかし、いま信用を担保するのはユーザーの評価です。大切なのは実体です。
視点3:消費行動は「所有から利用」へ
「所有から利用へ」という消費行動を後押しているものが2つあります。それは、モノからコトへという考え方と、モバイルを介したアクセス性の向上です。例えば、昔は車を所有することが目的でしたが、今車は、友だちや家族とキャンプに行く手段であり、恋人と海辺をドライブするための手段です。
車を所有すると、だいたい5年ぐらいはその車に乗ることになるので、車を所有せずにシェアリングサービスを利用して、目的に応じた車に乗る方が豊かであることに世の中が気づき始めました。しかも今は、モバイルで簡単に車を借りることができます。今後も所有から利用へという流れはますます加速するでしょう。
視点4:関係性は「支配から接続」へ
これまでトヨタ自動車は、必要な企業を買収しながら、さまざまなサービスを自前で実現してきました。そのトヨタが、ウーバー、アマゾン、ソフトバンクと協業して、新しいモビリティサービスのプラットフォームを構築することを発表しました。
とても買収できないような大きな企業とでも、接続すれば容易に共同体をつくることができます。もしうまくいかなければ、接続は簡単に切ることができますから、フレキシビリティもいいわけです。そういった意味でも、縦社会から横社会という考え方ができてきているのではないかと考えています。
視点5:サービスは「マスからパーソナル」へ
今は、膨大な数の顧客を抱えていたとしても、IoTとBIGデータとAIがきちんと機能すれば、顧客に対してパーソナルなサービスを提供することが可能です。そうした流れの中で、顧客自身も、パーソナライズされたサービスを受けることが当たり前になってきます。
逆を言えば、みんなと同じ商品やサービスを提供する企業は、自分のことを見てくれていない企業だと思われるでしょう。そうならないように、企業がサービスをアップデートして対応することが非常に重要になっています。
視点6:購買体験は「O2OからO2E」へ
O2Oはオンラインtoオフライン、オフラインtoオンラインという考え方です。これは、顧客にオンラインとオフラインのチャネル間を移動してもらい、商品を知ってもらい、体験して、購入してもらうというチャネル側の理論です。
しかし、そもそも顧客がオンラインから店舗に移動するのは、実際の商品を体験したいからです。つまり、重要なことは、チャネルがどうこうということではなく、顧客が求めるエクスペリエンスを提供する「O2E」オンラインtoエクスペリエンスという考え方です。
視点7:ビジネスモデルは「発明から編集」へ
ゼロからビジネスモデルを発明することは、非常に難しいことです。今、新しいサービスを提供するデジタル企業がどんどん出てきていますが、それらの大半は発明ではないと私は考えます。しかし、新しいエコシステムを生み出そうとする、シェアリングプラットフォームは発明です。
今はそうしたプラットフォームにコンセプトを載せることで、新しいサービスが生れてきます。つまり、ビジネスモデルはゼロから発明するのではなく、編集するという視点で考えるものだということです。
視点8:経営理念は「リブランディングからリビルディング」へ
かつてはブランドアイデンティティ戦略が重要だと言われていましたが、それはもう過去の手法です。今の時代、トヨタ自動車がモビリティカンパニーになると宣言したように、企業は新たな事業体として生まれ変わらなければいけません。
どのようなメーカーでも、作って売るだけではだめで、それを顧客にいかに使ってもらうかが重要になっています。そのためのサブスクリプションモデルもあるでしょうし、他の企業と組んで使ってもらうための前後の文脈を作らなければならないかもしれません。
全ての企業はサービス化していくという文脈で、企業フォーメーションを構築して新たなブランドを作っていくという考え方が求められます。