企業やブランドが「人」として振る舞う時代が来た
視点9:ビジョンは「現実から理想」へ
企業はビジョンを発表する時、それを何年後までに実現するのか、そのために具体的にどういうことをやっていくのか、実現できなかった時は誰が責任を負うのかということを話し合ってきました。ビジョンには現実性がなければいけなかったのです。しかし、その現実性がビジョンをつまらなくする可能性があります。
実現できるかどうかということはちょっと脇に置いて、まずは理想をドンとぶち上げる。そして、その理想に向かって一歩ずつ行動を起こしていく。そういう姿勢が重要な時代になっています。
例えば、ZOZOはZOZOスーツを撤退しましたが、ZOZOを応援している人たちは、そのことを非難するよりも、「やる時期がちょっと早かったね。だけど、もう1回トライすればきっとできるよ」と思っているでしょう。そして、そういうトライをどこよりも早くやったZOZOをすごいと思うわけです。
ビジョンは現実的なところに置くものではなく、理想的な未来に置く。そして、そこに向かって挑戦していく。そういう企業の姿を見せるとこで、応援してくれる企業が周りに集まってくるのだと思っています。
視点10:ブランドは「企業から人」へ。
最後の視点は、これまでお話した内容の総括になります。オートメーション化の時代になり、顧客は企業から個人として認識されていると思うようになります。そうした顧客に対して、企業は、AI、BIGデータ、IoTを駆使して、パーソナルでリアルタイムなサービスを提供し、顧客と会話していかなければなりません。
すると、顧客は、企業を企業として見るのではなく、自分を認知してくれている「人」として認識するようになります。そうなると、企業も自分は人なのだと認識して顧客と対峙しなければなりません。つまり企業が人として振る舞う時代がくるのではないかと考えています。
では、人として振る舞うとはどういうことでしょうか。
顧客の意思に反応し、リアルタイムで会話をしなければいけません。コミュニティにも属します。信頼できる人として、誠実に振る舞い、継続的で良好な関係を築きます。金銭的な関係で支配したり支配されたりする関係ではなく、常に対等でなければいけません。
相手が関係を継続することに魅力を感じるように、学習し、新しい能力を身につける努力をします。夢を持ち、その夢をコミュニティで公開して、共感してもらい、応援してもらうことができます。行動が失敗することもあるでしょう。それでも、夢に向かって行動する姿勢を貫けば、周囲の人たちから応援されるでしょう。その人たちの期待に応えて、周囲の人たちと協力して、夢を実現するために行動し続けます。
ブランドもまた人として振る舞わなければいけません。自分を高く売るためにイメージを作る時代は終わりました。すべての企業がサービス業へと変わっていくなかで、IoTでデータを吸いあげ、BIGデータを形成し、それをAIで分析して、顧客と継続的でパーソナルな関係を始めなければいけません。顧客の問いかけにリアルタイムで適切に答えられるように、常にアップデートが必要です。
顧客との信頼関係、絆が強い企業ほど、より沢山の顧客やパートナーと繋がることができます。企業はこれまで自分を大きく見せ、情報戦略で顧客のイメージや評価を上げることに莫大なマーケティング予算を投下してきました。
これからは、人として振る舞い、人としての評判を上げることで、周囲との良い関係を築く時代です。それは、従来のように広告で実現することはできません。誠実な事業で実現することであり、行動でのみ実現できることなのです。
【イベント概要】
「幸せ×未来×サービスデザイン ブランドと人との、これからの絆の作り方」
日時:2019年6月21日(金)19時~21時
場所:銀座 蔦屋書店 BOOK EVENT SPACE
募集人員:50名
参加条件:銀座 蔦屋書店にて、下記の対象商品をご購入いただいた方にご参加いただけます。
・イベント参加券:1,500円/税込
・書籍付き(『すべての企業はサービス業になる』1,944円/税込)イベント参加券:3,000円/税込
イベントへの参加申し込みはこちら!
『すべての企業はサービス業になる 今起きている変化に適応しブランドをアップデートする10の視点』 室井淳司 著 (好評発売中)
オートメーション化、シェアリング・エコノミー、O2O・・・要は何が起きているのか? 大きな変化を俯瞰し、判断の基準を持つことで戦略を正しい方向へと進めていきたいリーダーのための必読書です。
室井淳司(むろい・あつし)
Archicept city 代表/クリエイティブ・ディレクター/一級建築士
1975年広島県出身。2000年東京理科大学建築学科卒業後博報堂入社。2011年金沢美術工芸大学非常勤講師。2012年博報堂史上初めて広告制作職域外からクリエイティブ・ディレクターに当時現職最年少で就任し、翌年博報堂フェロー。2013年Archicept city設立。これまでの主なクライアントに、トヨタ自動車、キリンビール、SONYなど多数。新規事業・サービス開発、ブランド戦略、空間開発、広告コミュニケーション等において、企業のトップや事業責任者にクリエイティブ・ディレクターとして並走する。著書に「全ての企業はサービス業になる〜変化を俯瞰しブランドをアップデートする10の視点〜」(宣伝会議)など。