【座談会】
・箭内道彦さん(クリエイティブディレクター、東京藝術大学学長特別補佐・美術学部デザイン科教授)
・村本美知さん(ADKマーケティング・ソリューションズ/エクスペリエンス・デザインセンター センター長補佐 兼 EXソリューションユニット長)
・大澤あつみさん(トヨタ自動車/第一国内販売部 主任)
ハイスタ×巨大OOH×ソーシャルメディア
村本:グランプリの作品は大澤さんが最初から一押しだったものですよね。
大澤:そうですね。
村本:昨年のグランプリは「PLAY THE GIFT」といって、ハイスタンダードというバンドが18年ぶりにアルバムを出すという時に行ったキャンペーンです。発売前の新曲の楽譜を地下鉄の巨大なOOHでローンチして、それをバンドのコアなファンが演奏してソーシャルメディアに上げてどんどん拡散されていく、という流れがよくできていました。OOHとソーシャルなメディアを使ったものになっていて、その上、ファンの人たちのインサイトを上手く拾っている。その仕掛けが非常に上手くできているということで審査委員一同、最終的にグランプリはこれしかないね、と。
さらに面白かったのが、この楽譜がコンビニのネットプリントからも入手できるということ。そういう複合的なメディアの使い方、今までみんなが着目してなかったコンビニのネットプリントというメディアを取り上げている、ということが評価されました。
大澤:OOHは東京と大阪でしか見れないんですけど、それと同じ楽譜が全国のコンビニで出力できるんです。どこにいても楽譜が手に入るというのも素晴らしい仕掛けだなと思っていて。ただ私自身はハイスタンダード、そんなに知らなくて…
村本:私もそんなに…
箭内:めちゃくちゃ凄いパンクロックバンドです。このアルバムをファンたちはどれだけ待ち望んでいたことか。だからこそこの企画なんです。知っててほしいなぁ〜(笑)
大澤:ほんとすみませんって思いながら…知らないにしても、仕組みとしてすごく素晴らしいなと思って一番推してたんです。そしたらあとからTOKYO FMの森田太さんが、「僕だとファンで好きだから推したみたいになるから、あんまり推せなかった」と言われて。
村本:きっかけができたって。
箭内:そういう遠慮も取っ払う審査会にしたいですね。あとやっぱりこれは、アーティストとファンの間の強い絆をこちらに見せつけてきますよね。「君へのギフト」っていうコピーは、逆に言うと君以外の人たちへのギフトじゃないよっていう言葉。排除するということが、強烈な発信になっている。そういうコミュニケーションが素敵だなと思いました。この時代の広告が八方美人だけである必要はない。でも「ACCがハイスタをグランプリに選んだ」って、いいですね。