「CES ASIA」現地レポート③ — 独自の進化を続ける中国 これからも注目(森 直樹)

ドローン産業は中国に圧倒的なイニシアチブがある

次に、次世代ドローンの技術開発を行うスタートアップ企業である、エアロネクスト代表取締役CEOの田路 圭輔氏に話を聞きました。エアロネクストは「CES ASIA」で出展も行い、ドローンセッションでは登壇もしています(※レポート②で登壇の様子をお伝えしています)。

筆者:エアロネクストはどのような会社ですか?

田路氏:ドローンの機体フレームに関するイノベーションの会社です。ドローンのイノベーションには機体フレームの新しい技術が必要であり、エアロネクストはその領域に多くの特許技術を有しています。この特許と技術を武器にドローン市場で戦っています。

筆者:エアロネクストはなぜ中国に注目しているのでしょう?

田路氏:ドローン産業は中国の産業だからです。圧倒的な歴史、そしてエンジニアの数もドローンを飛ばせる環境も揃っています。つまり新しい技術を発表するには、中国が最適な環境であるのです。当社は中国市場をショーケースに世界へ発信していく計画です。

筆者:日本や欧米では、難しいのでしょうか?

田路氏:まず日本市場ですが、いまだ産業や環境(人材、ユースケース、飛ばせる環境)などが整っていません。また、欧米もドローンには力を入れてはいますが、国としての産業育成政策におけるドローンに対するプライオリティは中国が一番高いと思います。

筆者:ちなみに、中国市場ではどのような取り組みをしているのですか?

田路氏:国際ピッチに出場したら深圳から拍手喝采をいただき、それがきっかけとなって深圳に現地法人をつくることになりました。今は中国企業とのアライアンスを含め、様々な活動を行っています。ドローンは中国で認められることが、世界の市場で認められることになるのだと思います。

筆者:田路さんは新しい領域のビジネスを行う上で、中国と日本のビジネス環境や消費者の違いをどう感じていますか?

田路氏:中国は新しいテクノロジーの社会実装がしやすい国だと思います。例えば、ドローンは、人間の頭上を飛ぶ機械ですので、いきなり皆の理解を得るのは難しいです。そこで、中国は国が音頭を取ってしまう。それが、中国の強さの理由でしょう。モバイルQR決済やシェリングエコノミーが発展しているのも、同様の理由が背景にあると思います。

もうひとつ、強いところは、失敗したら撤退すれば良いと割り切っているところ。とにかくやってみようというスタンスが中国の方が強いと思う。日本だと総論でOKが出ても各論で潰されたり、すごく時間がかかったりすることが多い。特に、ドローンのようなタイプの技術の社会実装には日本は向かないのではないかと思います。

「CES ASIA」の会場に出展するエアロネクスト社ブースでインタビューに答える田路社長。

 

次ページ 「新興サービスと親和性の高い中国消費者の支えで成長、「BAT」を無視しては戦えない」へ続く

 

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