新興サービスと親和性の高い中国消費者の支えで成長、「BAT」を無視しては戦えない
最後に、電通イージス・グループのisobar中国から、Amplifi中国へ赴任したばかりの岩田正樹氏より中国広告活動事情や中国消費者について話を聞きました。。
筆者:中国と日本の消費者はどのように違いますか?
岩田氏:中国は消費者の新興技術や新興サービスとの親和性がとても高い国であり、そうしたサービスを提供する企業にとって重要なマーケットです。例えば、お年寄りもスマホを使いこなし(単にスマホを使っているのではなく、機能やアプリを使いこなしているという意味で)、AlipayやWeChat PayなどのQR決済のみならず、それらのアプリ経済圏のサービスを活用しています。そして、シェアリング自転車であるMobikeなど普通に使っています。
筆者:なぜ、中国の消費者は新しいものへの適用性が高いのでしょう?
岩田氏:その理由がよくわからないのです。適応性が高いだけなのか、それがないと生きていけないのか…。
筆者:提供サービス側の視点で、中国市場に思うことはありますか?
岩田氏:ここ最近のトレンドですが、2016年くらいに新興サービスがたくさん生まれて、2017年くらいに急拡大と急速な浸透を果たしました。その後、2018年に淘汰が始まり、今年はかなり落ち着いた。成熟期に入ったのではないかと思います。
あと中国市場で思うのは、最後の人海戦術部分が強いということ。新興サービスにおいてテクノロジーと人をつなぐ、ラストワンマイルの部分に、圧倒的な人口を背景とした人海戦術で対応できる。このエコシステムは、人材不足の問題が深刻化する日本との大きな違いだと思います。
筆者:テクノロジーとマーケティングの側面で中国独特のことはありますか?
岩田氏:「BAT」の圧倒的な強さでしょう(BATとはBaidu、Alibaba、Tencentの略で、米国で言うGAFAのようなもの)。基本的に、「BAT」のエコシステムに入らないと活動ができない。ちなみに、Alibabaが出資しているプラットフォームから、Tencentが出資しているプラットフォームへはリンクを飛ばせないなど、それぞれのエコシステムが独立した存在となっていまし。このあたりを理解しないと、中国でのマーケティング活動は難しいと思いますね。
田路氏のインタビューから、中国の官民を上げての新興技術への取り組みと、その勢い、スピードを感じ取りました。この雰囲気は筆者が、米国・西海岸のパートナー企業と仕事をしたり、西海岸での新たなサービスに触れたりするときの感覚に近いように思います。領域は違えど、中国は米国と同等、むしろ中国の方がそれ以上に早いスピードで新興領域に取り組んでいることは明らかです。当然、国の環境や政策が大きく影響してのことでしょう。しかし筆者はそれ以外にも、「失敗してもよいから、とにかくやってみる」という精神を中国市場に感じとりました。
また岩田氏の言葉から、そもそも中国の消費者の新興技術やサービスに対する関心や適応性の強さが、社会への浸透をさらに加速させていることが理解できました。スマートシティやそれを支える自動運転、AI、ドローン、ロボットなど世界の技術潮流の最先端として、シリコンバレーと共に中国の取り組みや中国社会・消費者への浸透を注目し続けるべきではないでしょうか。
森直樹
電通 CDC エクスペリエンスデザイン部長 クリエーティブディレクター
光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。 日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会の幹事(モバイル委員長)。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST (INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia (PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo 公式スピーカー他、講演多数。