角度いっぱい、おもしろいやら大変やら
保持:モンスターのみなさん、ACC賞に出す時はフィルムが多いんですか?
元松:フィルム偏重主義みたいのはなくなってきています。ACCの各部門でノミネートなり賞をいただいたものに関してはフラットに讃え合うというか。TYO全体でもその風潮は強くなっています。CM制作で大きくなった会社ですが、ニーズがだいぶ変わってきているので。広告という大きな視点でアイデアを出し合って、ブランドなのか、商品なのかに貢献できるということをモチベーションにして働くことが増えている。
映像が好きで入ってきている子が多いんですけど、昔に比べると「広告」という視野で仕事をしていこうという子も増えている。ブランデッド・コミュニケーションという部門で評価されるなら、フィルムじゃない角度から何か世の中に貢献できたということだと、素直に感じられる子が増えてきていると思います。
保持:アワードってアイデア一発だけではなく定着についてもプロの技がちゃんとやりきれているかという点が、技術継承的な意味合いで大切なのだと思います。ACC年鑑に載るということはお手本みたいな意味合いも少なくないので。
BC部門は審査委員にも企画者だけでなくきちんと手を動かす「定着」に近いプレーヤーのみなさんもたくさんいます。デジタルの勇吾さんとかイムさんとかはまさにそういう立場ですけど。モンスターさんのようなエグゼキューションを手がける方々にも審査委員に入っていただいて、新陳代謝していければ。
井上:最近はモンスターさんと一緒に仕事をするのも、CMありYouTubeありWebムービーあり、ツイッター用の動画があり。コミュニケーション全般にわたって、やり口を変えながらみんなで一緒につくっていく。それがすごいおもしろいです。最近はいろんな人と仕事をしながら、いろんな角度でいろんなことを切って行かなきゃひとつのキャンペーンとして成り立たない。最後はまとめビデオまで一緒にやっていく。トライするポイントも角度もたくさんあるからおもしろい。クソ大変ですけど。
保持:大変ですよね。
井上:全然最後まで終わらないんですよ。昔は、キャンペーンが始まったら終わってるじゃないですか。今はローンチしてからすべてが終わるまでずっとですよ。途中で直すこともありますし。
井:マクドナルドさんはとくに、ほかのクライアントと比較してSNSやツイッターの量がハンパないですから。1日に何件も、365日投稿されますからね。
井上:ターゲットを変えないといけないですから。SNSでターゲットとするお客様と店頭でのお客様はちょっとずつ違うので、コミュニケーションを変えないといけない。
井:タッチポイントごとに変えるという状況ですね。
井上:それがおもしろいといえば、おもしろい。
保持:めちゃくちゃ今っぽいお仕事ですね。リアルもありで人を動かしていかなきゃいけないから。
井上:セールスが毎日手に取るようにわかるので、売れないと困る。
保持:そうですよね。ブランデッドといいながら、ブランディングという大きな話よりもアクティベーションとプロモーション。でも最終的にはブランドに貢献しているという。そこがすごいですね。
井上:最後はそこにいかないと。
保持:「マクドナルドっておもしろい」「僕たちのものだ」という風になっているかって大きいですよね。同業者として、仕事としての誠実さをそこに感じます。ストライクゾーンが限られている中で。
井上:王道のなかでのちょっとした遊び。
保持:ちゃんとブランドの資産が貯まっている感じがします。
井上:必死の戦いすね。
保持:前にあったものに触れながらブランドの佇まいを築き上げている、ということで評価を受けたといいますか。ブランドらしさのなかに、さらにプラスアルファが出てきたよね、と。広告業界がそういうものを讃えて、オリエンと違ったけどアイデアを信じようとなったクライアントさんとの関係値がいいねとなっていくと、またクライアントさんも次もそうしてみようと思ってくださる。そういう流れがいいなあと。
井上:おっしゃる通りですね。明るく楽しく、みんなのものであるというイメージがブランドの上に描けるかどうかなので。まじめなブランドをつくりながら、楽しく。
保持:素晴らしいと思います。今日はありがとうございました。