接触400分時代のメディア環境の変化~「メディア定点調査2019」時系列分析より~

【前回コラム】「メディアの種類から広告枠、最新手法まで「広告ビジネスに関わる人のメディアガイド」を使ってみよう」はこちら

今年14回目となる「メディア定点調査」は、メディア接触時間、メディアイメージ、サービスの利用状況から意識・態度に至るまでメディア生活全般をとらえるために、年1回定点観測している時系列調査です。時系列分析から見えてきた生活者の意識やメディア行動の変化をご紹介します。

メディア総接触時間411.6分、初の400分台へ

2019年のメディア総接触時間は初の400分台、過去最高の411.6分となりました(1日あたり/週平均 東京 ※数字はすべて東京)〈図表①〉。

〈図表①〉メディア総接触時間時系列推移:1日あたり・週平均・東京地区

昨年から15.6分の増加。牽引したのは「携帯電話/スマートフォン」(14.5分増)と「テレビ」(9.9分増)です。「ラジオ」(0.8分増)と「新聞」(0.7分増)が微増し、「雑誌」(1.6分減)「タブレット端末」(1.1分減)が微減。昨年7年ぶりに増加した「パソコン」(7.6分減)は、再び減少して一昨年並みとなりました。

「携帯電話/スマートフォン」の接触時間は117.6分。初めて100分を超えた昨年から更に増加して、120分に迫る勢いです。年々拡大しているモバイルのシェア(「携帯電話/スマートフォン」と「タブレット」の合計)は、今年35.6%と、昨年より2ポイント上昇しました。〈図表②〉モバイルシフトは継続しています。

〈図表②〉メディア総接触時間時系列推移(構成比):1日あたり・週平均・東京地区

 

「携帯電話/スマートフォン」のメディアイメージは拡張、全イメージの1/2で首位を占拠

メディアイメージでは「携帯電話/スマートフォン」の躍進が目立ちました。イメージは生活者にとっての価値ととらえることができます。今年「携帯電話/スマートフォン」が初めて首位になったのは、「知りたい情報が詳しく分かる」(61.1% 昨年より10.0ポイント増)、「情報が幅広い」(56.7% 同4.7ポイント増)、「楽しい情報が多い」(55.8% 同7.7ポイント増)、「身近な内容の情報が多い」(50.4% 同9.7ポイント増)の4項目です。

これによって「携帯電話/スマートフォン」はメディアイメージ42項目中21項目で首位となり、全体の半分を占めました。情報の詳報性や広汎性という機能的価値、楽しさや親近感という情緒的価値の両面で「携帯電話/スマートフォン」は、一層拡張しているのです。〈図表③〉

〈図表③〉メディアイメージ42項目中、「携帯電話/スマートフォン」が首位のイメージ21項目

 

スマホの存在感が増す一方、ネットの情報と適度な距離感を保つ生活者

メディア定点調査では、メディア環境の変化をより深く探るべく、2016年から生活者のメディア意識・行動について聴取しています。生活者のメディア意識・行動がどのように変化したのか、2016年と2019年の増減に着目してトップ10を見てみます〈図表④〉。

〈図表④〉メディア意識・行動 増減トップ10(2016年⇒2019年)

変化が最も大きかったのは、「情報やコンテンツは無料で手に入るものだけで十分だ」(28.7% 2016年から17.3ポイント減)です。生活者は無料の情報やコンテンツだけでは十分だと思わない、すなわち「自分にとって必要であれば、有料であっても構わない」と考える生活者が増えていると言えます。

トップ10の中には、「スマートフォンを寝床に持ち込むことがある」「スマートフォンで映画やテレビ番組を見ることが増えた」「朝起きて、最初に触れるのはスマートフォンだ」など、スマホに関する意識や行動が多く見られ、生活者にとってスマホが益々なくてはならないものになっている様子が伺えます。情報に関する意識も変化しています。

「世の中の情報量は多すぎる」「インターネットの情報は、うのみにはできない」「世の中の情報のスピードは速すぎる」など、溢れる情報の中で、主体的に情報に向き合う姿勢が感じ取れます。スマホの存在感が増して生活と密接になる一方で、必要な情報は有料でもよいと考え、ネットの情報と適度な距離感を保つ様子が見えてきています。

メディア接触400分台時代のメディア生活

2006年の調査開始以来300分台で推移してきたメディア総接触時間は今年400分台になり、メディア環境は新たな局面を迎えました。接触時間400分台のメディア生活は何が変わるのでしょうか。確実に言えることは、情報の量とスピードが大前提になったということです。情報が「多すぎる」「速すぎる」と感じながらも、生活者がスマホを手放すことは考えにくいでしょう。

そのため、情報量に埋没されない届け方をしなければならないし、生活者が求めるスピードにも応えていかなくてはなりません。と言って、ただ速く届ければよいわけではありません。「メディアに関する意識・行動」79項目の中で今年のトップ3は、「インターネットの情報は、うのみにはできない」「情報は伝える速さよりも内容の確かさだと思う」「自分のアンテナに引っかかった作品には触れておきたいと思う」でした〈図表⑤〉。

〈図表⑤〉メディア意識・行動 2019年トップ3

「インターネットの情報は、うのみにはできない」はこの3年間における変化の大きさでトップであると同時に、生活者がいま最も強く感じていることなのです。また、「情報は伝える速さよりも内容の確かさだ」は、速さが大前提での内容の確かさが求められているととらえた方がよさそうです。

そして、生活者が拠って立つのは「自分自身のアンテナ」です。周囲の評判や自分好みのお薦め情報が溢れていても、最終的には「自分のアンテナ」にピンとくる新たな情報やコンテンツとの出会いを求めているのではないでしょうか。そのためには、メディア接触という側面のみならず、生活全体をとらえた上で生活者を見ていくことがより大切になっていくでしょう。

博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所 
新美 妙子

 
「メディア定点調査2019」調査設計
調査地区:東京都、大阪府、愛知県、高知県
標本抽出方法:RDD(Random Digit Dialing)
調査方法:郵送調査法
調査対象者:15~69歳の男女 
標本構成:4地区計 2,507サンプル(東京614、大阪616、愛知643、高知634)
2018年住民基本台帳に基づき性年代でウエイトバックを実施
調査期間:2019年1月24日~2月8日
調査機関:株式会社ビデオリサーチ

メディアガイド2019(博報堂DYメディアパートナーズ)
メディアガイド2019(博報堂DYメディアパートナーズ)

博報堂、大広、読売広告社の経営統合により、それぞれの持つメディア・コンテンツ機能を統合して、これまでに例のない「総合メディア事業会社」として2003年に設立。メディア・コンテンツビジネス領域において、プラニング、プロデュース、バイイング、トラフィック、ナレッジといった機能を駆使して、広告主・媒体社・コンテンツホルダーに対して最適な課題解決力を提供している。

メディアガイド2019(博報堂DYメディアパートナーズ)

博報堂、大広、読売広告社の経営統合により、それぞれの持つメディア・コンテンツ機能を統合して、これまでに例のない「総合メディア事業会社」として2003年に設立。メディア・コンテンツビジネス領域において、プラニング、プロデュース、バイイング、トラフィック、ナレッジといった機能を駆使して、広告主・媒体社・コンテンツホルダーに対して最適な課題解決力を提供している。

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