リコーは、組織風土改革プロジェクトの一環で同サービスを活用している。
鍵は「双方向性」のメディア
—リコーは2018年度から組織風土改革を本格的にスタートしています。そのきっかけを教えてください。
稲田:リコーグループは、全世界約200の国・地域において、現地に密着した販売・サービスを展開しています。全体で220のグループ企業、約9万人の社員を抱えているため、グループ会社、部門ごとにサイロ化し、イノベーションが起こりにくい状態となっていました。
現場の社員からは閉塞感を感じるという声もあり、市場環境に合わせて、柔軟に組織風土そのものを変えられる企業への転換が求められていました。良い文化は残し、悪い文化や競争環境に合わない文化は変えるべきだということです。
そこで山下良則社長とともに、社員がイキイキと働き、顧客価値を創造する企業文化を実現する「3 LOVES PROJECT*」を立ち上げました。社内外の壁を越えて視野を広げる仕組みですね。
*リコー創業者・市村清氏による理念「三愛精神」から命名した組織風土改革プロジェクト
—リコーは、このプロジェクトの一環で、2019年2月から「社内限定版NewsPicks」を取り入れていますね。
稲田:一過性の取り組みでは、長年形成されてきた組織風土や企業文化は変えられない、という思いがありました。だからこそ、社員が毎日読みたくなる面白いコンテンツが揃ったプラットフォームが必要だと感じていました。
さらに、ただ読まれるだけではなく、そこから内発的な行動まで結び付けることを目標に設定しています。どうすればいいのか、と頭を悩ませていたところ、「社内限定版NewsPicks」を知り、興味を持ったのです。
麻生:メディアを使って社員の自発性を生むためには、「双方向性」が非常に重要になります。よくある社内報のような、事務局からの一方的な情報発信では、従業員主体の発信は生まれません。コンテンツに対して「誰が何を思ったのか」を発信できる、またはしやすいオープンな場があることで、サイロ化は打破できます。
それがNewsPicksの強みでもあります。社員はスマホアプリ内で各コンテンツに対してコメントを書いたり「いいね」を押したりできるほか、誰がリアクションをしているのかも知ることができます。つまり、コンテンツを通じて、「社内で未来を見ている熱量のある人」が見える化され、周りにポジティブな影響が波及していきます。
だからこそ私は、初めてリコーのお話をうかがったとき、NewsPicksでお役に立てると確信しました。
稲田:そこでまずは2カ月間、グループ全体から抽出した500人の社員に、試験的に利用してもらいました。
社員は想定以上に自発的
—導入後の社員の反響は?
稲田:まず狙い通り、従業員エンゲージメントの測定基準であるeNPS※1(推薦者の割合-批判者の割合)の改善に成功しました。そのほか、社員からの発信も想定以上に多くありました。タレント性に富む人材が多く、コメントにも専門性が見られて驚きました。
麻生:我々が単純にプラットフォームを用意しただけではここまでの効果を得るのは難しかったと思います。事務局の皆さんのコミットメントがあったからこその成果です。一番驚いたのは、社員から「自分でも記事を書いて投稿したい」という声が挙がったことです。
稲田:麻生さんとの打ち合わせを社内システムで中継する試みをしたときに、画面越しに参加してきた社員から出た意見ですよね。うちにもこんなに積極的な社員がいたんだ、と嬉しくなりました。
このように「社内限定版NewsPicks」を導入したことで、社員からの熱量のある発信や社員同士のコミュニケーションの機会が増え、当社の未来をつくる自発的な活動に向けた進展が見られたのは大きな収穫です。
—2019年夏以降に全社展開を控えていますが、今後の展望は?
稲田:「3 LOVES PROJECT」の目標は、社内のメディア改革に留まりません。組織を活性化させ、次世代人材の育成・輩出の拠点となり、実際の顧客価値創造までつなげることを、本気で目指しています。
今回はその第一歩として、内発的な行動を誘発することができましたが、まだ課題は多く存在しています。例えば、アプリ内でのコミュニケーションからいかに実際のアクションに結びつけるのか、といった行動導線の改善が必要です。
麻生:そうですね。ただNewsPicksを導入しただけで従業員エンゲージメントが高まるわけではありません。目的の設計・運用・コンテンツ制作・コミュニティづくりに対する運営サイドの本気さが求められますし、地道な改善が何よりも重要です。これは、我々が今まで培ったノウハウが活きる分野でもあります。
組織風土の改革は、一朝一夕では変えられない大きなテーマですが、我々はリコーの成功に伴走していきます。
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