クレームが来るほど「良いCM」?Cook Do®のCM裏話(ゲスト:杉咲花)【前編】

Cook Do®のCMオーディション裏話

澤本:偶然なんですけど。中野さんがまだ立派な監督になられる前にご自分でつくった短編映画を水戸短編映画祭に出品されたことがあって。僕も権八くんも水戸短編映画祭の審査員で、権八くんは講演会をやってね。

権八:そうだっけ? あぁ付き人のような感じで。

澤本:いや付き人じゃないですよ。そのときに中野さんの『ロケットパンチを君に!』という、短編でものすごい面白いのがあって。それを審査員として準優勝か何かにしたんですよ。

権八:推したわけですね。

澤本:くだらないんだけど泣ける映画で。そのとき授賞式で中野さんと話したのが記憶に残っていて、その中野さんがつくった映画だと見に行ったら、凄い良い映画じゃないですか。

杉咲:あ、湯ですか?

澤本:そうです。素晴らしかったです。花ちゃんと言えば、まず映画は湯……湯って(笑)。

杉咲:そう、湯って言ってるんですよ(笑)。ありがとうございます。

澤本:僕が花ちゃんのことを映画で最初に見たのは『トイレのピエタ』ですね。これも非常に好きな名作で、野田洋次郎くんがとても合ってる役、特徴的な役をやっていて、うまい人だなと思って。

権八:そうなんですよね。

澤本:花ちゃんもうまい、本当にお世辞じゃなくうまい。‎Cook Do®のCMに出てらっしゃったときの食いっぷりがうまそうすぎるよね。

杉咲:本当ですか(笑)。ありがとうございます。

権八:あれのプランナーの佐藤由紀夫さんという電通の方もゲストで来てくれたことあるんですけど、じつは僕、新入社員ぐらいのとき一緒にサブプランナーとしてやってたんです。花ちゃんが出る前、柳英里紗ちゃんという子が出てたときにね。あのシリーズ最初は木梨憲武さんで。

杉咲:あれは事務所に入って最初に受けたオーディションだったんですよ。事務所の方がごはんを食べてるシーンを集めたDVDを見せてくださって、それを見て勉強してから行ったんです。

澤本:おー、偉いね!

杉咲:そのおかげだったのかもしれないですね。

澤本:練習したんだ?

杉咲:見ただけなんですけど、実際のオーディションでは食べたんですよ。それを思い出しながら食べました。

クレームが来るほど良いCM?

権八:実際にオーディションでホイコーロー食べたの?

杉咲:食べました。

権八:やっぱりホイコーローなんだ。凄い食べ方するよね、生卵につけて食べたり。

杉咲:すき焼き風の、おいしいんですよ。

権八:オーディションのときはどんなことを意識して食べたの? やっぱりがっつく感じですか?

杉咲:そうですね。いっぱいすくって、口を大きく開けて食べることを意識しました。

澤本:これぐらいの天才女優でもちゃんと勉強して、研究して、オーディションを受けてるんだから。

杉咲:いえいえ、そういう環境をつくってくださったので本当に感謝ですね。

権八:あのCMの良いところは全員食べ方が豪快すぎたり、奪ったりして意地汚かったりするじゃないですか(笑)。クチャクチャ、ビチャビチャという食べる音もあえて強くしていて。そうすると結構クレームが来るらしいのね。でも、それはとても良いことだとしてるわけです。

杉咲:えー、へー。

権八:クレームが100件ぐらい来ないとイマイチで、100件以上来ると商品がものすごい売れるんですって。

杉咲:えー、凄いですね。

権八:凄いんですよ。これ演者の人に言っちゃいけないのかな(笑)。

杉咲:いやいやいや。

権八:僕は良いことだと思って、この話を広めたいんですけど。味の素の方もクレームが今回は物足りない、もっとクレームばんばん来いと。

杉咲:凄いですね。

権八:そのほうが売れるらしいんですよね。僕らがなんでこういう話をするかというと、クレームが非常に怖くてですね(笑)。日々ビクビクしながらCM制作をしてるわけですよ。

杉咲:でもクレームをするってそれぐらい印象に残ってるということですもんね。

澤本:その通りですね。ヒットしたCMはニアリーイコールでクレームが多いCMだったりもするんです。キンチョーというCMをやってる会社わかりますか?

杉咲:はい。

澤本:あそこの会社って結構強い表現をやるから、ものすごい面白いんだけど「下品」「やりすぎ」というクレームが来ていて。でも、さっきの権八の話と一緒で、クレームが来ないとちゃんと反応すらされてないとも考えられるわけ。だからクレームが来ることをそんなに悪く思わないと昔から英断をされていて。それこそネットがなくて、電話だったときから。今、僕らは他社でCMつくって、ネットでクレームが来るとすぐに僕ら怒られますもんね。

杉咲:あ、そうなんですか?

澤本:ここでこういうことを言って、クレームをしてくるリスナーがいたらやめてほしいんですけど(笑)。

次ページ 「『トイレのピエタ』の松永監督との出会いで芝居が変わった」へ続く

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